【そちらは、元気でやっていますか?】(スネイプ)(7巻後)
私はスリザリンだった。
私はブラックの家系だったから、スリザリンになるのは当たり前だと思っていた。
だから仲の良かった遠縁のシリウスが、グリフィンドールになった時は「さすがシリウス」と内心称賛したし、そのあと悪戯仕掛人と仲良くなれて、楽しかった。
魔法薬学が得意で、同じくこの授業が得意だったセブルスとも打ち解けられ、スリザリンにいることも別に悪くなかった。
そのうち、レギュラスが入学してきて、相変わらずスリザリンとグリフィンドールの仲は最悪だったけど、私はその間で、リリーと友達になりながら楽しく生活していた。
憧れだったホグワーツの教師にもなれて、そしてあとから入ったセブルスの助手を任されていた。
ジェームズの息子が入学してきたり、ルシウス先輩の息子が入学してきたり。
毎日は、輝いていて、楽しかった。
†††
「そう、セブルスは死んでしまったのね」
友人のセブルスが死んだ。
今回の戦争でリーマスも死んだ。シリウスも一昨年死んでしまった。ピーターも死んだと聞いた。
レギュラスや、ジェームズもリリーも死んで久しい。
私だけが生き残ってしまった。
みんなみんなハリーを守って、立派に生きて、素晴らしい人生を、最期を送っていった。でも私は。
「マリア先生、ありがとうございます! 本当に助かりました」
「ハリー。お疲れ様」
ハリーを目の前にして、みんなは晴れやかな、英雄を見る顔で称賛しているが、私の心は逆に真冬にいるようだった。
みんなハリーを守って死んでしまったのだ。
死んでいった人達は、私がこんな気持ちになるのは、いいとは感じないだろうけど。それでも、
そんな私の内心を表情には一切出さずに、私はハリーに微笑みを向ける。
「私は何も出来なかったわ。貴方のおかげよ、ハリー。
これからどうするの? 7年生の単位は全く足りてないわよー? このままじゃ留年ね」
「えっ!?」
「ふふ、冗談よ」
顔は笑顔を作る。心は笑顔など浮かべられないというのに。
リーマスは、奥さんになったトンクスと一緒にいた。
シリウスの遺体は回収出来なかったし、……セブルスはきっとまだ1人いるよね。
迎えに行ってあげないと。
「ごめんなさい。私、そろそろ行くわ。
ハリー、本当にお疲れ様、ありがとう」
「先生もお疲れ様です」
ハリーはそう言うとすっきりとした表情で笑顔を浮かべていた。
振り返って彼もどこかへ向かう。きっとロンやハーマイオニー、ジニーの元へ向かうのだろう。
私も歩き出した。
†††
「うわ、セブルス。酷い」
彼の遺体を目の当たりにして、私の口は呆然とそう呟いていた。
表情はごわばったままで、指先はカタカタと小さく震えてしまう。
思った以上に、酷い状態だった。
みんな瓦礫の撤去や、怪我人の治療。そして他の遺体運びで忙しいのだろうけど、セブルスも早く移動してあげたいなぁ。
何処からか隙間風が吹くここで、私はセブルスの隣に座って、取りあえずは彼の首から流れたのであろう固まった血を綺麗にした。傷口は軽く塞ぎ、衣服を直す。
目元に流れる涙のあとを拭っていると、なんだかやるせない気持ちになった。
壁によしかかるようにしていた彼を、私はセブルスの頭が自分の膝に来るようにする。
こうして整えて見ると、ただ眠っているだけみたい。違うのは眠りが覚めないというだけだ。
「ねぇ、セブルス。みんな死んじゃったわ」
あなたもジェームズもリリーもレギュラスもシリウスもリーマスもピーターも。
みんなは「死んでしまった人もいるけど、もうヴォルデモードはいないんだ!」と平和を主張するけど、私は、そんないい子にはなれない。
私はみんなと一緒にいたかったし、これからもずっと、ずっと一緒にいたかった。
膝上のセブルスの髪を撫でながら、私は天を仰ぎ見る。
「どう? そっちは賑やか?」
セブルスはリリーだけに会いたいだろうに、絶対に邪魔をするんだろうなぁ、あの鹿。
また喧嘩してそうだなぁ。あの人達、結局いつまでも子供っぽかったし。
で、その中にもシリウスも混ざってさ。そしてリリーに怒られてさ。
あぁ、でもセブルスも教員が長かったから…、ジェームズとシリウスが相手でも勝てるかな。
それをリーマスは苦笑して見ているの。昔みたいに。
それかリーマスはトンクスと一緒にいるかな?
シリウスとセブルスだけだよ。結婚しなかったの。
シリウスにいたっては本命が誰かもわかんないままだし。
「ふふ。楽しそうね」
囁きながら、私の頬に涙が伝う。
涙は誰にも拭われることなく落ちて、セブルスの顔に落ちた。
その涙はセブルスもまた泣き出したようだった。はは、ざまーみろ。とか思う。
セブルスの髪を殆ど無意識で撫でながら、私はヒトリ、しばらく涙を流していた。
(そちらは、元気でやっていますか?)
私はここで元気にやっていきます。