そして私の左太腿へと手斧が振り降ろされた。
1回絶叫血が私の頬にまで飛び散る2回ウサギの顔が更に血に塗れた3回ウサギの力は尋常じゃない4回血が私の周りに広がる血の海だ5回ガツンと音がする骨に当たったんだ6回再びガツン7回もう1度ガツン8回ゴキンッ音が変わった折れた折られた9回振り下ろした手斧が引っかかる肉や骨に突き立てられたまま鋸のように動かされ不自然なほど軽くなる私の左足。
意識が飛んでしまえばいい。だが、ウサギは悲鳴が聞こえなくなるからと、私の意識を確実に保たせたまま何度も手斧を振り下ろし、そしてついに私の左足は太腿辺りで途切れることとなった。減量成功。
「はァ…名残惜しいよ、セニョリータ。そろそろお別れの時間みたいだァ。その血の量じゃ、もう駄目だ」
寂しそうにそう言うウサギだが、私はやっと見えてきた開放に心底安堵すらしていた。
私の周りは血で溢れている。ぐちゃぐちゃに汚くなった私は途切れかけた呼吸でただただ泣いていた。
やっと死ねる。この痛みから開放される。私を覗き込むウサギが私の目の真上に手斧をかざした。そしてひと思いに殺してくれ。おねがいだ。
「え?」
疑問の声はウサギから零れた。
突然、ウサギの胸元から金属の大鉈が生えていた。
着ぐるみの胸元から血液が飛び散り、血塗れの私にウサギの血が混ざる。血の海が広がる。あの大鉈は。
ウサギが胸元から血を流しながら、言葉を零した。
「おめー…、どっか行ったんじゃなかったのかよォ、セニョール!」
もしかしたら私の度重なる絶叫が三角頭のところまで届いていたのだろうか。
三角頭は無言で佇みながら、ウサギに突き刺した大鉈を横にスライドさせる。
ウサギの着ぐるみが上下に別れ、大量の血の海に倒れた。カランカランと音を立てて落ちる手斧。動く着ぐるみはこれで完全に黙ってしまった。
三角頭が倒れた私を見下している。三角頭の目が見える訳ではない。
だが、確実に三角頭が死に絶えそうな私を見下していた。
「…………ははっ…」
乾いた笑いが溢れる。この足では逃げられない。ウサギに殺されようが、三角頭に殺されようが、私にはどっちだってもう構わない。
むしろ痛めつけるように殺すウサギよりも、ひと思いに真っ二つにされた方が苦しくないのかもしれない。
血と涙と涎と鼻水と汚い汚い液体の中で、私は目を閉じた。ギィ、ギィと三角頭の持っていた大鉈が音をたてていた。
ギィ…。ギィ…。
苦しくて怖くて痛くて息が出来ない。いっそのこと息を止めたい。でも止まらない。止められないのに、止めさせられる。
私の意識は激痛とともに闇に沈んだ。
◆テトロドトキシン
フグの毒素として有名な神経毒の一種。
摂食後の20分程度から数時間で麻痺などの症状が現れ、意識が明瞭なまま急速に進行し、24時間以内に呼吸困難で死亡する場合が多い。
解毒剤は存在しないが、素早い人工呼吸など、適切な処置がされた場合の救命率は高いとされている。
習慣性がないため強力な鎮痛剤として医療にも用いられている。
(Wikipediaより引用)