シリウス・ブラックと、リア・ブラック。
新入生全員がアルファベット順に並んでしまえば、よっぽどの事が無いかぎり隣同士になる。
厳しそうなマクゴナガル先生に言われるがままに新入生は並んだが、この2人の間だけは不自然な空間が空いていた。
どちらからも話し掛けることなどせず、空気は凍っている。
「……私、スリザリンに行くわ」
大広間の扉を潜り、他の新入生が感嘆の声をあげる中、リアは隣の彼に囁いた。
シリウスは前を見たまま、彼女を視界にはいれない。
彼女は気にせず続けた。
「でも、貴方までもがスリザリンになる必要はないと思うの」
シリウスには周りの感嘆の声などもう聞こえず、リアの小さな声だけが聞こえていた。
「彼…、ジェームズ・ポッターの家系も代々グリフィンドールだった筈。
私、貴方がグリフィンドール寮生でもいいと思うの」
「……………俺は、ブラックだ。
闇寄りで、純血で、あの母親から生まれてる。
……絶対…スリザリンだ」
シリウスの言葉にリアは隣の彼の横顔を見つめた。
シリウスもやっとリアの顔を見つめる。
2人の視線がぴったりとあった。
リアは無表情だったが、優しく、暖かい瞳をしていた。
「私は…、私が、スリザリンに入るの。
私は『緑のブラック』よ」
「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組分けを受けてください」
リアの言葉に被さるようにして、先生の声が大広間に響いた。
2人の視線は外され、また2人とも前だけを見つめる。
リアはちらりとだけ、横の彼を見た。
その横顔は昔と変わらず、そして見違える程変わってしまっていた。
「ブラック・シリウス!」
ブラックの家名に広間がざわつく中、リアは静かにシリウスを見つめていた。
かぶった帽子が暫く沈黙したあと、そして叫んだ。
「グリフィンドール!!」
ざわつきがより一層酷くなる中で、リアは小さく、ほんの小さく微笑んでいた。
そしてもう1度、シリウスを見ると、彼と目があった。すぐに視線は外れてしまったのだけれど。
声など届かないが、リアは思わず囁いた。願うように。祈るように。
「どうか……貴方は、自由に――」
(I want you to be happy.(私は、貴方に幸せになってもらいたい))
何にも縛られずに幸せになってもらいたいの