ホグワーツの城が見えてきて、他の新入生が感嘆の声をあげていても、リアの気持ちは未だに底辺をさまよっていた。

もしスリザリン以外の寮に入れられてしまったら。
今のリアの中を占めるのはそれだけだ。

スリザリン以外の寮ならば、本当に継母や継父に勘当され、自身を可愛がってくれている今の現状はなくなり、見限られてしまう。
実の父親も、きっと、二度と彼女とは会ってはくれなくなる。

リアにはそれが怖く、同時に緊張が襲って来ていた。

「リア、大丈夫? 顔色が悪いけれど……」
「えぇ。大丈夫。大丈夫よ」

心配そうなリーマスに浅い笑みを返すリア。

湖を船で渡るため、次々と新入生が4人組になっていく中で、誰かがリーマスの肩を叩いた。

振り返ると眼鏡でくせ毛の少年が人懐こい笑顔を見せていた。
リアはまだ知らないが、彼は、ジェームズ・ポッターという。

リアがみるみるうちに笑顔を消し、無表情になっていく横で、ジェームズはリーマスに話し掛けていた。

「えっと、リーマス! …だよな?」
「ジェームズ! うん、リーマスであってるよ。さっきはありがとう」
「こちらこそ! 無事に列車に乗れたみたいでよかった」
「あはは、僕も駅で迷子になるとは思ってなかったよ」

どうやら、彼らは少し前に知り合った仲のようだ。
リアはリーマスのローブを少し引くと、小さく呟いた。

「……あの、お友達が来たのなら、私、別の船に乗るわ」
「えぇ!? そんなこと言わないでよ。お嬢さん。
 こっちにも連れがいるんだ。4人で乗ろうよ」

リアの言葉が聞こえたらしいジェームズが笑いながら彼女の手を掴む。

リアは無表情ながらも、何度かジェームズとリーマスの顔を見比べていた。
やがて、小さく微笑んで、肯定の意を示す。

「お願い、します」
「もちろんさ。僕はジェームズ・ポッター」
「私はリア」
「リアか。いい名前だね。
 僕の連れも紹介するよ。
 ――シリウス・ブラックさ!」

現れた男と目が合ったリアは、時間が止まってしまったような錯覚に陥った。

ジェームスより少し離れた場所で佇むその姿に、なぜ気が付かなかったのだろうか。
きゅと縮まったような胸の痛みを覚えながら、リアは彼の姿を見た。

彼もリアの存在をそこで理解したようで、呆然と立ち止まり、次にはその整った顔つきに深い嫌悪を示した。
リーマスとジェームズは2人を見つめ、次に顔を見合わせる。

シリウス・ブラックは黙っているリアを睨むと、小さく呻いた。

「なんで、ここにいんだよ」
「私は、彼と一緒に来たの。それだけよ」

リーマスの隣に立ったままのリアも小さく返すと、シリウスは舌打ちをし、そして踵を返した。

「………胸糞悪ぃ。ジェームズ、行こうぜ」
「ちょっと待ちなよ、シリウス。
 彼女と知り合いなの?」
「そいつの名前はリア・『ブラック』。
 これ以上は言わねぇ。嫌いなんだよ。…その女」

本当にそれ以上言葉を発しなかったシリウスは、そのままリアを置いて歩き出した。
暫く悩んでいたジェームズも、リーマスとリアに断りを入れてからシリウスの背中を追い掛けていった。

残されたリーマスとリア。

リーマスは呆然とシリウスを見送るリアの横顔を見つめていた。
その顔からは何も読み取れない。リーマスはきいた。

「リア、よかったの? 彼を行かせて」
「…………彼も言っていたでしょう。彼は私が嫌いなの。
 追い掛ける理由もないわ。
 …ねぇ、よければ一緒に船に乗らない?」
「もちろん。喜んで」

リーマスはリアの手をとった。

彼女の手は思ったよりも青白く、冷たかった。


(Going nowhere fast.(もうどうにもならない))

私達は来るところまで来てしまったの


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