学校が始まった。

学生生活のほとんどをリアはセブルスと過ごすようになっていた。
リアはセブルスに隠し事はしないようにしていたし、セブルスもリアにはなるべく打ち明けるようにしていた。

それでも、お互いにたった1つだけ秘密を抱えていたが。

「……次の魔法薬学はグリフィンドールと合同か」
「…………そう」

セブルスの囁いた台詞にリアは困ったように眉を下げる。
セブルスも、リアも、グリフィンドールに憧れ、そして苦手だったのだ。

準備をし、地下牢教室に向かう途中で教室の方から何やら騒がしい物音が聞こえて来る。

不思議そうに顔を見合わせたあと、2人はおずおずと教室に入っていった。

教室の中は悲惨だった。
教室の中に、何故か真っ白い兎が至るところで跳ね回っている。

見た目には可愛いその小動物達が跳ね回り、跳び回り大鍋をひっかけ落とし、薬品棚に突っ込み薬品をぶちまけていた。

「ひ、酷いな」
「あら、可愛いじゃない」
「リア。この状況でその感想はおかしい」

そこで教室の隅で大爆笑しているグリフィンドール寮生を見つけた。

リアは一瞬息が止まった。
それはシリウスとジェームズだったのだ。

屈託なく笑うシリウスをリアが静かに見つめていた。
仄かに嬉しそうな顔をしたリアの顔をセブルスが気がついていた。

「貴方達! 何しているのよ! 怪我した子もいるのよ!?」

そこでシリウスとジェームズに、赤毛で緑の目をした女の子が怒鳴りに行くのが見えた。
今度はリアの隣にいたセブルスが押し黙った。

「あぁ、Ms.エバンズ。大丈夫だって。ただの兎じゃないか」
「悪戯なら度が過ぎるわ! 今すぐに戻しなさいよ!」

ジェームズと女の子が言い合っている。リアはセブルスを突き、顔を覗き込んだ。

「彼女。知ってるの?」
「リリー・エバンズ。……幼なじみ。みたいなものだ。
 リアも彼らを知ってるのか?」
「シリウス・ブラックと、ジェームズ・ポッターよ。
 シリウス・ブラックとは、アー…幼なじみ。ね」
「大変だな」
「えぇ。大変ね」

リアとセブルスは短く言葉を交わすと、騒ぎの中心から離れるように席についた。
兎は未だに飛び回っており、やってきた魔法薬学教師が短い悲鳴を上げていた。

少女の意識がだんだん兎達へ向いていく。
頬を緩ませたリアがニコニコとうさぎの跳ね回る姿を見つめていた。

「兎、可愛い」
「……全く。…ほら。この量だ。1体ぐらい抱えていてもいいだろ」
「ありがとう。セブルス。
 ふふ。可愛い」

捕まえた兎に嬉しそうに顔を埋めるリアを、シリウス・ブラックは遠目に見ていた。


(I look forward to seeing you.(あなたに会うのを楽しみにしています))

そんなこと絶対に言ってやらないけど。


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