珍しく彼女は起きていた。
スピカはアークの中にある自分の特等席に、アークにある大きな窓辺に座っていた。
強化ガラスの外は小さな細々とした星が漂っているだけである。その景色をスピカは静かに見つめている。
ぼんやりと景色を見つめているスピカの姿をオプティマスが見つけた。
スピカに近寄ると、スピカは小さく言葉を発した。
「宇宙は広いね」
その声は感嘆が混ざっているように思えたオプティマスは、静かに深く頷く。
スピカの瞳には窓越しの宇宙が映っていた。アークが動いていることによって動いて見える星達がスピカの目に映りこんでいた。
「こうして宇宙を見ていると、色んなことを考えるの。
今まで私の行動は正しかったのか。これからどうするのが正しいのか」
「君はメガトロンではなく私達オートボットを選んでくれた。その選択を後悔しているのか?」
オプティマスの問いにスピカは瞳を閉じ、静かに首を左右に振った。
「後悔してはいないわ。でも、」
彼女はまた言葉を隠してしまう。オプティマスはスピカを静かに見つめながら、視線を彼女と同じものへと移した。
オプティマスでもスピカがどこからやってきたのかを知らなかった。
彼が知っているのは先代プライム達がスピカを溺愛していたことだけだ。
そして先代プライム達が途絶え、オプティマスが新たなプライムとなった時も、彼女は宝として扱われた。
どれもスピカが自ら望んだことではないのだろう。
スピカはいつだって周りの環境が流れるのに身を任せていた。
スピカが選んだのは、オートボットの味方になるか、ディセプティコンの味方になるかその2択だけだったように思う。
そして彼女はオートボットを選んだ。
「後悔はしていないけど…、困惑はしてる。これから、何をすればいいのかしら。
私が望んだのは…、誰も…、誰も傷つかないことだったのにな…」
スピカの表情は切なげだった。1度瞳を閉じたスピカだったが、再び視線を上げた時にはいつもの凛とした表情だった。
オプティマスはスピカの横顔を見てから、小さく言葉を零した。
「君は…、君は随分遠くまで見えているのだな」
「違うわ、オプティマス」
スピカはオプティマスを見上げて微笑んだ。
「私は何も見えちゃいないわ」
彼女の零した言葉をオプティマスは静かに聞いていた。
(blind. 盲目)