『まーた寝てるよ。俺達の姫さんは』

にこやかに笑うジャズが、アークの窓際にある彼女の特等席にいるスピカを見つめた。
丸くなり、窓に身体を預けているスピカは寝息も零さずに眠っていた。

ラチェットが興味深そうにスピカを見る。

『有機体である身体の生命活動を維持するためにもスリープモードが必要なのだろうが…、スピカの場合、少々、多すぎるな。
 彼女と同じ種族は、皆そうなのだろうか』
『さぁ。そもそも、スピカと同じ生命体がいるのかどうかも怪しいだろ。俺は見たことないし』

ジャズはスピカ近くで腰を下ろす。丸くなるように眠っているスピカを眺めていた。

ちなみに彼らは今、体内通信で会話をしている。
よく眠るスピカはその眠りも浅いのか、些細な音や気配でも目を覚ましてしまうのだ。

金属生命体である彼らの気配も気がついてしまうのだから、相当なものである。スピカが眠った時は皆、なるべく気配を消すのが常だった。

スピカのその浅い眠りを妨げないのはアイアンハイドだけなのだ。

『もしかしたらこの長い旅でスピカと同じ種族を見つけることがあるかも知れないな』
『………スピカ、俺達から離れたりしないよな?」

ラチェットがそう推測した言葉に、ジャズが珍しく寂しげな声を零した。

『同じ種族を見つけたら、その星に残りたくなっちゃったり?』
『………さぁな』

その時が来た時のスピカの選択はジャズ達には決してわからないのだ

側にいてくれればいいと希望だけは持ちながら。

何だかんだ言って小さくて愛くるしいスピカの存在は、オートボット達にとって大切なものなのだ。

「ラチェット、オプティマスが呼んでる」

その時、アイアンハイドが些か乱暴に部屋に入って来た。
音声機能の調子も良好で、眠っていたスピカはふるると揺れて、ゆっくりと目を覚ました。

ジャズとラチェットが同時にアイアンハイドを非難の目で見る。

「アイアンハイド、それはないぜ」
「リペアが必要か?」
「す、すまない」

察したアイアンハイドが謝るが、スピカはもう身を起こして、短い欠伸をしたところだった。

側にいたジャズに両腕を伸ばして抱き上げて貰えば、スピカは眠たげに微笑んだ。

「大丈夫だよ。あんまり眠っていたら起きれなくなってしまうもの。
 何のお話? 私も連れていって、ラチェット」

ジャズの腕からラチェットに移るスピカ。
スピカにとってはジャングルジムに近いのだが、彼らは潰してしまわないかと多少ハラハラ。

アイアンハイドは腕を組んで立ったまま、スピカを見ていた。

「あぁ、スピカになら構わないだろう。
 これからの行き先についての話らしいからな」

ラチェットの肩に腰をかけたスピカは、再び欠伸を零していた。

スピカはニコリと窓の外に広がる宇宙を見ていた。

「ふーん。スパークもセンチネルも早く見つけてあげないといけないものね。
 ………でも、そろそろスタースクリームの方に先に会う時期かもしれないわ」

呟かれた後半の言葉に一瞬戦慄が走るが、スピカは眠たげに微笑むだけだった。

ジャズがゆっくりと言葉を零す。

「なんで、先のことを知っているんだ?
 スピカはオールスパークの声が聞こえるという噂だったが…、本当なのか?」
「へぇ。そんな噂があるのね」

そう返したスピカは、ジャズの質問の答えは出さない。
ただ、スピカは彼らのキラキラとした青い瞳を見てから、にっこりと笑みを浮かべた。

「それでも私は貴方達を裏切らないわ。それだけは信じて欲しいの」
「むしろ、信用されていないと思われているのなら、心外なんだが?」

真っ直ぐに返って来たアイアンハイドの言葉に、お姫様は幸せそうに目を細めていた。


(future. 未来)


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