「この者は女神を拐かした大罪人です」
ああ、王だと担ぎ上げられていたくせに、大切な人すら助けることすらできないのか。
「……せめて婚礼さえ終えていれば、ナマエに婿を取らせて新たな王とすることもできたのでしょうが」
また酷いことを。国を守る為ならばヒトの心など関係ないというのか。
ナマエ。突如現れた先王の落胤に宛てがわれた可哀想な娘。
アルクスに阻まれて殆ど交流はできていなかったが、ある種の被害者仲間であった彼女のことも助けたいと思っていた。否、二人で助かりたかった。あの時僕が塔に行かなければ、女神に会わなければ、二人で手を取り合う未来がきっと訪れていた。
薄れゆく意識のなかで、せめてナマエだけはこの滅びかけた王国から逃げられることを願う。愚かな王が討たれる今ならきっと、彼女を縛る鎖も解けるだろうから。