邂逅
Encounter

__これはと或る少女と少年が探偵社に入るまでの怪奇譚と云える。

少女が十五と為らぬ頃、彼女は世にも珍しい【異能力】に目覚める。
どういった能力かは彼女自身も知らず、勿論、珍しい訳であるからしてこの存在を信じる者は決して多くはなかった。誰もが注目の的になりたいんだろうと蔑む人間も少なくもなかった。
彼女は自己主張をするわけでも無いが故に友人も少なく頼れる身寄りの人間は自身の母親しかいなかったのだ。
それでも、彼女は自身をこよなく愛してくれる母親が唯一己の心の拠り所なのだ。
しかし、或る昼下がり少女とその母親が乗っていたバスに黒背広
スーツ
を見に纏った武装集団が乗り込んできたのだ。
当然、乗客はパニックに陥り乗客の中には形振り構わず自分だけ生き残ろうとする薄情な人間が窓から脱出を試みるも其の儘黒スーツの男たちによって射殺。
車内に益々不安と緊張、恐怖が募る。

少女とその母親もその内の一人であった。
母親は十五の娘に嫌な思い出にさせてしまったと罪悪感に塗れてしまう。
一体、如何して自分達がこんな目に遭わなければならないのか…。
車内の乗客、将又
はたまた
運転手でさえそう思っているのだ。

一方で少女は一般論とは異なりそんな事すら思う余裕もなかった。
薄情な人間が横たわっている隣に彼女は座り込んでいたのだから当然既に人が絶命した血の通わない顔が目に映る。
彼女は恐怖に怯え自身を強く強く抱き締めた。

或る時、後ろの座席からこの緊張が奔った社内に全く似ついても似つかない呑気で気長な【欠伸】が聞こえた。

「ぐ、ふあぁぁ〜…ん?また死ねなかったか…譬え【仮死状態】でも文字通り【仮死】だから完全には死ねないンだね〜困ったな〜。…あれ?何この状況」

少女の真後ろの座席で【仮死】から目覚めた一人の男。その声に乗客・武装集団全ての視線がこの男を捉えた。
少女も吊られてつい後ろを見てしまった。こんな状況で呑気に話せるとは一体どんな鈍感過多な人間なのだろうか…と 。

見た光景は至って普通だった。
普通で普通と云えば嘘になる。と変な日本語だがその表現が正しいようにも彼女には見えたのだ。
男は黒い外套を纏いネクタイを着けて腕と頸元、そして右眼から頬骨に掛けて曲線を描くように巻いた【包帯】が際立たせる。
一見、自分とあまり齢は変わらないように見えるも少し大人びている。
凝然とその男に見つめていると、その視線に気づいたのか男は彼女に向かって微笑んだ。

しかし、彼女はその笑顔を嫌悪した。
この状況の最中で如何してその様な顔ができるのか。
__まるで自分を見てくれたことに対して心底幸福を表しているかのような…そんな顔だ。と、一瞬考えを過ぎったが首を横に振ることでその思考を遮断した。

駄目だ、不安や恐怖で思考力が完全に機能していないのか。今、何か良からぬ事を想像した様な気がする。
少女は直ぐ様顔を背け男から今侵されている現状に目を向けた。
未だ武装集団は銃火器を両手に乗客を脅かしている。

「ねェ、お嬢さんお名前は?」

再び不意に耳元に聞こえた不快な声。
男は無造作に整えられた黒髪を揺らし小首を傾げる。
聞こえていないとでも思っているのだろうか。男は再度少女に問い掛けた。

「お嬢さーん?君の名前を教えて欲しいな?」
「……何なのですか貴方は」
「うーん、私が聞いているのだが…まあ良いか」

くぐもった声で何やら独りで呟いているが何を云っているのか全く聞こえない。
すると、男は何を思ったのかまたあの嫌悪な笑みでこう名乗ったのだ。

「私の名は太宰治さ。お嬢さん、私は君に遭いたかったのだよ」
「…」

警告 警告。
今のは聞かなかったことにしよう。
こういう男こそ俗に云うナンパと云うのだ。
何故初対面の人間に遭いたかったと思えるのか少女は分からなかった。
先ず、口出しする以前に前々から云っているがこの現状を目にして取り敢えず焦ってくれ。
そうやって無視し続けるも男、太宰は執拗に迫った。

「おーい?お嬢さん?お名前は?」
「…よくこの様な状況で赤の他人の名乗りを聞けますね」
「そうかい?私はこう云った類いの光景は職業柄、五万と見てきたからあまり気にしないな〜」

警報 警報。
かなり危険な職業に就職した女誑しだと…
只のヤグザではないか。
その気長な爆弾発言に身を凍えさせる少女。
だが、直ぐにそんな事は戯言に過ぎないと思考を切り替えた。そもそも遠回しにでもそんな正直に云うか、普通。
何にしてもだ、今しがた出会ったばかりの…否、偶然乗り合わせてしまった男に、況してやこの状況下で戯言を口にする変質者に個人情報を自ら流出するなど…そんな自滅行為誰がするか。

「その様な方に名を名乗るわけにはいきません…その申し訳有りませんが…」
「うーん、困ったな、では貴女の事を何と呼べば善いか…」

お嬢さん?彼女?お嬢様?何て再び自我の世界へ戻り独り言を呟いているが構っている暇はない。
隣の母親は震え上がり少女の手をぎゅっと握っているのに気づきそっとその上に自身の手を乗せた。
すると、母親の顔は幾分色が増してきたようだった。その表情を見た少女も又幾分気持ちが和らいだのかもしれない。

しかし、一人の黒背広
スーツ
の男がブツブツと念仏を唱えるかのように少女の呼び名を黙考する太宰という男に銃口を向けた。
車内は忽ち悲鳴に塗り潰され緊張が奔るが、当の太宰はきょとんと今になって状況を読み込めないといった表情で首を傾げた。

「え、何君達。そんな物騒な物を持って危ないだろう?」

しかし男はそんなのはお構いなしに無遠慮に銃口を太宰という男の眉間に突きつけた。
譬え赤の他人とは云え一般人が危険に侵されているのであれば少女も心配そうに太宰を見る。
すると、その視線に気づいた太宰は目を細め少女に向かって口の動きだけで彼女に伝えた。

だいじょうぶ

と云っているように見えたが、本当に大丈夫なのだろうか…と不安に駆られるが彼の口許は笑っていた。

「いや〜このご時世何時何が起こるかなんて分かりやしないね…まさかマフィアに遭うし挙句の果てには銃口を向けられるなんて…私の人生もここまでかな?」

途端に饒舌となった太宰。口許は確かに笑っているが、目は睨んでいる。
その睨みに男は多少揺らいだ。

そこで頭脳明晰な少女は直感した。
理屈なんか如何でも良いと投げ棄てる感覚でら。

……何かが可笑しい。
太宰に銃口を向けている男だが彼は本当に無表情だった。
まるで人殺しを厭わないと云った残忍の顔だ。
だが、気掛かりなことが一つある。
それは、向けている銃口だ。
無遠慮に突き付けていると云ったが…ほんの僅かに眉間から浮かしている。
だからとは云わないが___どこか…太宰を恐れているようにも見える。
__まるでこうなるように仕組まれたかの様な…
確信はない。
だが、本能的に警報が鳴っている。
太宰はこういったのは慣れていると云った。
その声に嘘はないだろう。
そして問題は太宰だ。
彼は気長で呑気で掴めない所がある。
口元は笑っているが目元が笑っていない鋭い眼孔を宿していて何より、装いからして只の社畜では無いことは明白だ。
この男は一体何者なのだ…。

そう思った矢先、車内の先頭から何やら噴射口から白い煙を放ちバスの中が一瞬にして白く染まった。
少女含め乗客全員がその煙を吸い込み咽せ始めた。

すると、乗客の一人が突如悶え始め呻き声を上げた。
動揺で目一杯吸い込んでしまったのだろう。
しかし、そこで少女はこの混乱状況の中で冷静に考え、そして気づいた。
これは…何者かによって仕組まれた策略だと。
このままでは乗客が危ないと体が思いのままに出た矢先、異変は起こった。
突如、苦しみ悶え始めたその乗客は血が昇った為純潔な柔肌の色は次第に赤桃色の血が溜まった様な色に変換しその皮膚には幾筋もの血管を浮かび上がらせそのまま息途絶えた。

その瞬間、嘲笑い背中を谷底へ突き落とすかの様に乗客達を一気に混沌へと陥れた。
突如絶命した乗客に一種の錯乱状態が生じる車内に只々唖然と見つめてる少女。
先程に続き遺体を見るのは二回目。
この状況下を察するにあと数分もすれば己も彼らと同等の存在となるのだろうか。

動揺で我が身を守る為に必死に窓を開け充満した毒ガスから解放されるようにともがくが武装集団はこれを逃さず、逃げようという魂胆も逃げ場は無いと諦める人間形振り構わず全員銃火器が噴く炎の餌食となった。


奇跡的に車内の固定物によって隔てができそれで塞ぎ母親共々避けられた。
しかし、ふと目にした車内の床に流れる赤血を見て震撼した。
広がる光景を名付けるのならば【地獄】だ。
車内の床と壁には生気をなくした無数の屍と赤い血痕でこのバスの中には血液特有の生臭い異臭が支配した。
如何してこんな事にならなければならない。
少女は自問自答した。

只自分たちは幸せな人生を送っていたいだけなのにそれを蝕む輩が必ずこの世の中に五万と居る。
そして、その輩が今多くの尊い命を奪った。
ご老体に中にはまだ先の未来が待っている幼子も愛する母親と共に買い物をするのを嘸かし楽しみにしてただろうに…。今日の晩御飯は何だと、明日の天気は何かな、と極身近で大人からしてみれば如何でも良い内容から興味を抱く未来も全部取り上げられた。
少女は呆然と眺める。母親は隣であまりの惨劇を目にして気絶している。
しかし、何故か涙は出なかった。虚しさと怒りで如何にかなってしまいそうだった。
様々な感情を抑え必死に紡ぎだした言葉。

一体彼らが何をした。誰の指示で動いている。誰が…誰が目的で。

「…酷い。こんな事…」
「君はそう云うけど、私たちはこういう事が仕事なのだよ」

不意に後頭部に感じる無機質な物体と音。
発せられたその嫌悪を覚える声質の主は後ろを見なくとも分かる。
きっと、思い通りに仕掛けた
トラップ
に掛かった鼠だとでも思っている様な瞳をしているのだろう。

「改めて…初めまして、お嬢さん。まァ初めましてと云っても此処からはこっち
マフィア
としてだけど」
「……嘘だ」

少女の真後ろ詰まり太宰が座っていた席から伸びた腕。その手にはしっかりと黒い無機物が握られて構えられている。

「嘘じゃァないさ。私はポートマフィアだ。聞いたことないかね?ポートマフィアを」

あり得ない。と云いたいがあり得なくもない。
このヨコハマを拠点とする一大組織だ。
黒社会の暗部その物と呼ばれる冷酷かつ残忍な連中が集う組織。

その組織の一人が…、この男?

「君のことは調べさせて貰ったよ。誕生日は1月11日、血液型はA型。身長161糎(センチメートル)の体重49キログラム…清水紫琴ちゃん?」
「…」
「見掛け通り君に相応しい名だねェ」

ポートマフィアが相手と分かった今、警戒を強めなければ何をされるか分からない。
先程の己の名前を聞いていたあれは演技だったのかと云うよりもこの男が己を狙っているのは明白だ。つまり…と気付いた少女は握っている母親の手に更に力を加えたそれは震えていた。

「さ、い初から…此方を、狙って…?」
「…当然さ。そうしないと君とゆっくり話すことが出来ないからね」

如何かしてる…この男は如何かしてる。
元々表に出さない狂人なのか全くそんな真意を見せなかったこの男に今度こそ絶句する少女。
何時の間にか前部座席の方で先程残虐の限りを尽くした連中が大人しく此方
こちら
を見ている光景を横目で捉え驚愕し最早何が真実で何が虚偽なのか判断できない思考になっている。

「やっと…見つけた」

縛帯で包まれた腕を伸ばされたと思わず目を瞑るがその行き先は頭部から頬骨に掛けて撫で下ろされたその手付きは愛猫や愛犬を愛でるのに等しい。
少女はそれすらをも嫌悪し忌々しく思えるその手を弾いた。
それと同時に見ず知らずの黒社会の人間に触れさせてしまったことへ恥じる。
一方で弾かれた方の手を今度は強行手段として腕を伸ばして試みようと潜考するが後の計画に支障を来す場合も含め今は止めた。
その代わり…

「紫琴、私と一緒においで。私と一緒に生きよう」

この男は先程から何を云っている?
一緒においで?一緒に生きよう?
馬鹿馬鹿しい。この惨劇の首謀者が何を抜け抜けと戯言はもううんざりだ。
そう云った意味も含め少女は顔を盛大に顰める。
だが、話だけでも合わせなければその後何をされるか分からない為一応こう問いてみる。

「…こ、…断ったら?」
「勿論、君を殺す」
「……ぇ」
「君を殺して、私も死ぬ」

あまりにも躊躇しない即答にあと何回冷や汗というものを掻けばいいのだろう。
だが、彼の芝翫茶色の双眼は真実を物語っているかの様に不敵に細められている。
即ち、拒否したら本気で己を殺す。

「その、台詞…典型的な追跡魔
ストーカー
みたいですね…、寒気がします」
「…ふぅん、つまり問いへの答えは?」

「……厭よ」

そう断言した。
この見ず知らずの男と共に暮らすなど1週間も経たずに気が狂ってしまう。
今迄懸命に一人で自分を育んできてくれた最愛の母親には申し訳ない気持ちで涙腺が緩むが自我で居られなくさせられる位なら一層の事…。
すると、太宰がそう、と云って溜息を吐いた。
そろそろお別れの時間の様だ。死別間際で母親を今世の別れとして抱き締めた。
さようなら、と意味も込めて。


己を殺す
今では此処で彼の異変に気付くべきだったのかもしれない。あの彼が態々己と二人で話し合う為に部下に惨殺を命じ且つ母親を気絶されるかの様な惨劇を繰り広げたのにも関わらず、共に生きようと絶望の中での誘惑に引っかからなかっただけで殺すなど有り得ない。彼ならもっと利口な手口を使う筈だと。


不意に後頭部から無機物が離れ気を落とした瞬間、遠慮なく引き金を引き鳴り響いた発砲音。
それと同時に左肩に感じる重みと異質なネチャという音。
そして、閃光の様に浴びる鮮血。
目を見開いたのはーー少女だった。
そして今迄堪えて居た涙が途端に溢れ出させ視界不良な状態の侭母親から己の身体を起き上がらせ見た。

既に息途絶えた少女を愛し育んできた母親の姿。
後頭部から眉間に銃弾が貫通した痕が残っていた。

「嗚呼…嗚呼…お、お母さん」

ゆさゆさと只の屍と化した肉塊を揺らす少女。
しかし、当然生気を喪った彼女の母親は応答せずに只目を瞑っていた。
つまりこの瞬間車内に居る人質は彼女だけとなった。
当の彼女は放心状態で呆然と母親を見つめる

何が起こった?何故自分が生きている?
母親が死んだ。如何して?
従わなかったら己を殺すと云ったのは?
たった今世界が静止したように今世の別れを共にしている間にまんまと彼女を欺いたのは?
全部、この男だ。

彼女の中には複数の感情がある。
自分を唯一愛してくれた母親の喪失に対する沈痛。
そんな母親を殺した男への憎悪。
男への憎悪から来る殺意。
そして、唯一生き残った己への罪悪感。

負の感情が連鎖した彼女は全ての思いを目の前の男を睨み上げぶつけた。
嗚呼…憎い憎い憎い憎い!!

異能力___《誰が罪》

すると、彼女にはどす黒い無数の文字が纏う。
武装集団は異能力というものに見慣れているのか一体となって怯んだが、抵抗を見せた少女に銃口を向けた。
しかし、男は呑気に前席の背もたれに頬杖を付いて見つめている。

だが、異能を発動させている彼女以外の生存者全員はこう思った。

絶対に何か来る。

すると、程なくして予測通り車内に異変が生じる。
全て物が次第に軋みバス自体が崩壊し始めたのだ。地盤の歪みが生じる時と同じ原理だろう。
これが少女の異能の作用か。
恐れを抱いた集団は一斉に銃撃を開始するがその弾丸は一向に彼女の皮膚に貫通しない。
かと思いきや、発砲した銃弾は彼女の足元に散乱していた。

ーーー化け物、彼らが生前の最期に口にした言葉は儚くも安らかなものではなかった。



▽そうして、残りは太宰と一人になった。
彼女は詳細不明の異能力で恰幅のある男数人を瞬く間に抹殺した。
憎悪故なのか、ライトブラウンの双眼は暗晦に塗れ、意識がないのか…人の死を目の前に況してや己の手を汚したとしても何ら動揺を見せない。
武装集団は少女の近くの床に倒れ泡を吹いている。
その光景を今迄見物していた男は少女が意識が戻るまで待っていた。
すると、次第に少女の瞳に光が戻り事の惨劇を見て言葉を失った。

「ぁれ…わ、此方ッ、は何を」
「君の死闘観させてもらったよ。実に惨殺に特化した異能力だ」
「なっ何を云って…?」

「…少し難ありだけど」

だから何を云っていると問いかけようとしたがぐっと詰まった。
何故なら、後ろの背後に気を付けていなかったのだ…運転手の存在を。

後頭部を棒状のもので殴りつければ幾ら異能力者の少女も気絶ぐらいはするだろう。
案の定、少女は鈍器で殴られたような感覚に目の前が霞みその儘意識を失った。


倒れて意識を失った少女を一瞥すると太宰は男に目を向けた。

「いやァ助かったよ」
「いやいや、とんでもない。お役に立てて良かったです。…それで、報酬の方は」

如何やらポートマフィア側で飼われた刺客らしい。
それも金銭で目が眩んだ方の。
その男に一声掛けた後、太宰は男に笑みを浮かべて
「勿論だよ。目を瞑っててくれ給え。その方が驚き(サプライズ)があって善いだろう?」

と云えば、金に眩み、報酬の保証の確認が取れた男は云われた通りに実行した。
すると、太宰は男の金の執着に汚物を見るかのような顔をして懐から取り出したのは報酬が入った茶封筒ではなく、一丁の拳銃だった。
太宰はそれを迷わず男に向け躊躇することなく無表情に引き金を引いた。

致命的な部分を狙って撃ったのだから即死だった。
それも忠実に従った金にばかり目が行った男のお蔭だ。
結局の所、車内に立っている人間は太宰一人。
太宰は一息ついて、床に倒れて意識を失った少女を優しく抱き上げた。

「御免ね運転手さん。彼女を捕らえてくれたのは感謝している、それは本当だ。だが、流石に後頭部を殴りつけるなんて…下手したら死んでしまうよ。私の彼女を痛みつけた代償として許し給え」

これを聞いた者は口々に云うだろう。

''狂っている''と。

「さァ、お家に帰ろう。愛しい紫琴」

そうして、廃バスと化した固体から出て姿を消した太宰であった。
ALICE+