頬の表面温度、只今上昇中



あの島を自分の意志で決めたと言っても半ば誘拐みたいに出てから1年。
まだ名の売れていない頃は何度も他の海賊に襲われて、嫌でも能力や戦闘能力をあげさせられ、ローの名前もそこそこに知られるようになった頃……




「きゃー!ちょっとキャス!何するのよー!」

「わりーわりー!まさかその石鹸に…ぷっ、あはは!」

「笑い事じゃなーい!」




“ハートの海賊団”と呼ばれるようになった姫達はあまり変わらず平和だった。
船のデッキを掃除していたクルーの一人、姫はどうやらシャチが置いていた石鹸を踏み、水浸しのデッキに滑ってダイブしたようだった。
おかげでお揃いのつなぎは泡だらけ。髪にまで泡がついているから大変だ。
その滑りっぷりがあまりによかったからかシャチやその周りにいたクルーまで楽しそうに笑っている。
ちょっぴり悔しくなった姫は、




「…っ、食らえ!水鉄砲!」

「うわっ!?おま、能力使うなんてずりぃぞ!」

「聞こえないもーん」




海の上にいるので水は大量にある。
姫は能力で無数の水の塊を作るとそれをシャチ向かって飛ばしていた。
水でいくら姫が力を制御してわざと水の球の大きさを大きくしている、と言ってもやはり当たれば痛いわけで。
シャチは必死にそれから逃げていれば……凍るような低い声に足を止めた。

ついでに、クルー全員の体も。




「…何してんだ、お前ら」

「きゃ、キャプテン…」

「……姫、」

「うっ…ごめん、ロー」



咎めるように一人名前を呼ばれて浮いていた水の球を元の海水に戻すとローはつかつかと姫に近づいて姫の腕を掴む。
即座に怒ってる、と理解すれば、“ROOM”の声。
バラバラにされる!と姫はすぐにぎゅうっと目を瞑る。…が、違う場所でぎゃああっという声。



「あれ…?ってみんながバラバラー!」

「悪い子にはお仕置き、だろ?」

「え、…んっ!」



あー、とみんなの呆れたような、少し羨ましそうな声。
姫は…ローに深く口づけられていた。
途中その場にいなかったベポやペンギンも騒ぎに気づき甲板に出て、またか、というような顔。
最後にぺろり、と姫の下唇を舐めてローは唇を離し…かっこよく口の端を上げた。




頬の表面温度、只今上昇中

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