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この面子が集まれば自然と早くなる酒を飲むペース。
特にオレとペンギンはザルどころか穴の開いたボールのように飲むからいつも一番先に潰れるのはシャチだった。
…が、今日は姫も一緒だ。
酒の飲める年齢になる前に姫と離れたから姫の飲めるペースは未知数。
この前の飲み会では次の日早くに出勤だからと姫が飲んでいたのはノンアルコールだった。
今日は全員明日遅くに出勤だから当然アルコール。
最初の一杯はビールでそれからもずっとビールを飲み続けている。

姫を見ていると多少酔っているのか少し顔が赤いだけでまだまだしっかりしている。
シャチは自分のキャパくらいわかっているくせに無理して飲んでもうかなり酔っていた。
…姫は案外強い方なんだな。
姫より弱いシャチは一体どんだけ下戸なんだ、情けねぇ。




「姫、案外強いんだな」

「え?あ、うん、そうみたい。今まで二日酔いとかもなったことないし…」

「へぇ…すごいじゃねぇか」

「ふふ、よく言われる」




にっこり笑うと姫はトイレに行こうと思ったのか、席を外そうと立ち上がった。

…が、やはり少し飲みすぎたのだろう。
軽くふらり、と姫の体が傾く。

慌てて姫の体を支えれば「ありがとうございます」と恥ずかしそうにはにかむ。
何時もより赤く染まった頬に、無防備な笑顔を向けられてドキリ、と胸が高鳴ったのがわかった。
何を考えてんだ、と頭をふって、もうバランスをとっている姫の体から手を離す。




「大丈夫か?」

「えぇ、もう大丈夫。少し風に当たってくるね」

「…オレも行く」




ちょうど風に当たりに行きたかったとこだ、と繋げれば姫はじゃあ一緒に、と歩き出す。
酔っ払いのシャチをペンギンに押し付けるのは気が引けたが、奴なら小言を言いながら許してくれるだろ。

やはり少しふらつく姫を支えながら外に出れば冷たい風が頬を撫でる。
熱くなった体にはちょうどよくて心地よさに小さく息を吐いた。




「…この間も、一緒だったね」

「あ?…あぁ、この前の飲み会か」

「あの時はありがとう」

「…礼を言われるような覚えはないが」

「ふふっ…そっか」




なら、気にしないで。

そう遠くに視線をやりながら優しく笑った姫に何ともいえない感情が湧いてくる。
…あの時、オレは姫がベタベタと触られるのが嫌でわざと水をかけた。

言わば、オレのエゴ。

それなのに礼を言う姫はオレのことを過大評価しすぎだと思う。
…が、それを言うのは野暮ってもんだ。
オレは特に何も言わずに壁に背中を預けた。




「…人間の脳って不思議ね」

「ん?」

「私…あなたたちのことを全然覚えていないはずなのに、心のどこかであなた達とこうやってお酒を飲んだりする時間を待っていた気がするの」




不思議よね、と小さく呟いた姫に、オレはゆっくりその肩を抱き寄せた。
初対面に近いオレにこんなことをされて怒るかと思ったが、姫は何も言わずにオレに体を預けてくれる。

…これも、脳の無意識だったりしてな。

無意識のうちにオレを受け入れてくれているのなら、嬉しい。

そんなことをぼんやりと思った。

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