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「〜〜…よねー」
「本当本当!泣いてる女の子も数知れずらしいし…あ、ほら、あの麻酔科の、」
「えー!あの純情そうな子まで!?…はぁーすごいわねぇ、本当」
「何の話ですか?」
「あ!姫先生!」
お疲れさまですー、と笑顔で挨拶してくれる二人の看護師さんにお疲れさまです、と笑う。
いつもの椅子に座ると先ほどの二人が好奇心いっぱいな目で私を見つめる。
いいのかな?でも言いたい!
そんな心の声が聞こえてきそうなほど。
「それで、何の話だったんですか?」
「姫先生、トラファルガー先生のお噂はもう聞いてます!?」
「ロー先生の?一体何の…」
「女遊びが激しいってやつですよ!まぁ、噂というより事実なんですけどね」
「ロー先生が…?」
思い浮かんだ不敵な笑みを浮かべるロー。
確かに顔が整っていて、モテそうだけど……私が話したローはそんな印象を全くもたないものばかり。
飲み会のときも看護師さんたちをあしらったり、私を助けてくれたり…お仕事のときは的確なアドバイスをくれて、真面目で優秀、という印象が強かった。
信じられない、とばかりに困った顔をすると看護師さんは私が知らないことを悟ったのかここぞとばかりにローの伝説を話し出す。
この病院の3分の1の看護師が体の関係をもったことがある。
患者さんからも言い寄られて、退院してから手を出した。
不倫もしている、修羅場になった…などなど。
本当に現実に起こったことすら怪しいことばかりだが、看護師さんたちは本当だと言い張る。
……ローが、本当にそんな女遊びを…?
「もしかして、姫先生トラファルガー先生のこと気になってたりしてました!?」
「え、い、いえ、そんなことはないんですけど…ただ、信じられなくて……」
「まぁ…先生は優しすぎますよ!トラファルガー先生にだけは絶対騙されちゃダメですからね!」
あの先生は腕はすごくいいんですけど女の敵ですから!
そう言い切った看護師さんに私は曖昧に頷くことしかできなかった。
…私は人の噂を鵜呑みするほど単純じゃない。
特に色恋沙汰に関することは尾ひれのつくものだと思っているし、大体話している間に誇張されていることがほとんどだ。
ただ、何もないのにそういう噂が立たないのも事実。
もしかしたらローの才能に嫉妬してあらぬ噂を流されているのかもしれないけれど。
(あんなに顔つきがかっこいい人は中々いないしね)
「姫」
「…え、あ、ロー…!どうしたの?」
考え事をしていたからか、ノックの音に気づかず、入ってきたロー先生が私に声をかけるまでぼぉっとしていたようだ。
しかもさっきまで思考の中にいたロー先生だったから、非常に焦った。
無意識に時計を見るといつの間にかお昼休憩の時間で、先ほどまでいた看護師さんたちはいなくなっていた。
…道理で気づかないわけだ。
何時もなら私が思考に耽っていても看護師さん達がしっかりしてくれているから誰かが入ってくる前に声をかけてくれる。
そのおかげで今までこんなことはなかったのだけど……
素直にぼぉっとしていたことを謝ると「大丈夫か?」と心配されてしまった。
…ほら、やっぱり優しい。
「大丈夫。次のカンファレンスのことを考えてたの」
「あぁ、あれか。確か小児科の…」
「うん。…ところでどうしたの?」
「あぁ、…まぁ大した用じゃねぇが…」
「…?」
何とも歯切れの悪い答え。
何でもはっきりさせたいローにしては珍しい反応に私は小さく首を傾げる。
少し答えを逡巡するような仕草をするとローの真っ直ぐな視線と絡んだ。
「新しいカフェが近くにできたらしい。昼飯、そこで一緒に食わねぇか?」
「あ…もしかして角にできた?私もちょうど行きたかったの!行こう!」
二つ返事で頷いて白衣を脱ぐとお財布と携帯だけ持つ。
ローは慌てすぎだろ、と笑うと私の頭をくしゃっと撫でた。
…その熱にどきり、としたことは自分の心の中だけに止めて私も笑い返したのだった。
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