恋ってやつ?



何だか最近変だ。


「リクオくん、」

「え!?あ、姫ちゃん!!な、何?どうしたの?」

「…?先生呼んでたよ」

「……そ、そっか…ありがとう……」



姫ちゃんに話しかけられると心臓の鼓動が速くなる。
声も上擦るし、何だか顔も熱くなる気がする。
カナちゃんならその後他愛のないことを話せるのに、姫ちゃんだと何を話したらいいかわからない。
だから結局長く話せなくて、寂しく思う自分がいる。



「姫ちゃん、これ、この前言ってた本」

「わあ…!本当に借りていいの?」

「もちろん。…姫ちゃんに…その、喜んでほしくて、さ」

「ありがとう。本当に嬉しい」



むかむかむかむか。

隣のクラスの、ちょっぴり女子に人気な男子。
明らかに姫ちゃんに好意があって、よく姫ちゃんに会いに来る。
今だって、僕の知らない間に約束していたのか本を貸している。
しかもあんな嬉しそうな笑顔も向けられて。

…胸の奥でドロドロとしたものが渦巻いて、自然と彼に向ける目線が厳しくなって……



「リクオくん」

「…姫、ちゃん」

「明日、時間あるかな?」

「…え…?」

「リクオくん、この前傘なくしたって言ってたよね。
この前すごく素敵な唐笠を売ってるところ見つけたの。よかったら、一緒に行かない?」

「…っ!!」



この前ぽろっともらした、傘をなくしたこと。
そんな小さなことも覚えててくれていたなんて…!

そんなことすら嬉しくて、さっきまであったドロドロした気持ちなんてすっとなくなる。

……って、やっぱり変だ、僕。

何でこんなに感情がコロコロと左右されるんだろう。
もしかして、これが、


恋ってやつ?


「…っ!!(って、僕なんてことを思って…!)」

「(リクオくん、顔赤いけど大丈夫かな?…もしかして、困ってる!?)」

「(うわー!うわー!どうすんだよ!余計意識しちゃうじゃんか!)」

「(な、何て声かけたらいいのー!?)」



そうやってすれ違っているのも、恋。

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