ユルシ



ケジメをつけてぇ、ついてきてくれるか?というリクオさまに小さく頷いてついていく。
リクオさまにとって“ケジメ”とは一体何なのかわかっていた私はただリクオさまを信じることしかできない。
――私も、覚悟を決めているのだから。

ざわつく屋敷の中をリクオ様は私の腰に手を回して堂々と歩かれる。

そして一番奥の間…総大将であるおじいさまがいる襖を開け放つとおじいさまと鴉天狗様がいた。
二人はリクオ様と私を見ると小さく眉を顰めたが「どうした、リクオ」と声をかけた。
話がある。とリクオ様はつぶやくと二人の前に正座し、拳をついた。



「姫が俺と腹違いってぇのはわかってる。…だが、俺の心に決めた女は姫だけだ」

「わかってんのか?血が繋がってんだぞ?」

「関係ねぇよ。俺は姫を愛してる。だから…姫を正式に許嫁にする許しがほしい」

「リクオ様!!それは国衆が、」

「俺が必ず説得する。だから最初にじじいの許可がほしい」



頼む、と頭を下げるリクオさま。
私も同じく頭を下げると、沈黙が落ちてくる。

しばらく、この沈黙は続いたが、…小さなため息とともに破られた。



「好きにしろ」

「…!恩に着る」

「おじいさま…っありがとうございます…!」

「…ったく…わしもかわいい孫娘には甘いのぉ…」



年かのぉ、鴉、と呟くおじいさまにもう一度深々と頭を下げる。
リクオさまは後ろの襖をちらりと見やるとすっと立ち上がり、その襖をあける。

…と、バタバタバタとたくさんの妖怪さんたちがなだれ込んでくる。



「…何やってんだ、てめぇら」

「だ、だって!!姫と若が二人で総大将のもとに行くなんて…何かなーって心配で…!!」

「そ、そうですよ、若!!一体総大将に何を、」

「まぁ、ちょうどいいな。…おめぇら、よく聞け」



座っていた私に手を差し出し、優しく立たせると…突然、口づけが降ってくる。
しかもただ重ねるだけのキスではなく、何度も啄むようなキス。
リクオさま、と咎めるような名前を呼びたかったけど、リクオさまはそれを許してくれない。

だんだん箍が外れてきたのか、深くなっていくキスに足に力が入らなくなる。



「…んっ…ぁ…」

「……っ、やめーい!!!」



スパーン!!!といい音を立てて、リクオさまはお祖父さまに頭をたたかれ、ようやく解放される。
でも、力が入らなくて、リクオさまの胸に体を預けているとぎゅっと抱きしめられた。



「そーいうことだ。…お前ぇら、手ぇ出すなよ」



不敵な笑みを浮かべるリクオさまにみんなから「すげー!」「やるな、若!」「男前ー!」などと囃子たてられる。

私といえばみんなの前であんなキスをしてしまったことが恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がない。
穴があったら入りたいとはまさにこのこと。
顔を真っ赤にして俯いているとリクオさまは「んな顔するな、…とめられねぇだろ?」と囁く。

あぁもう、だれかリクオさまを止めてください……

ぎゅっとリクオさまの袖を握りしめながら、…みんなに認められたこの想いに胸をいっぱいにしていた。


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