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少しだけ息を弾ませながらいつもより早く歩いて応接室を目指していた。
暴れているやつらは草壁が言うほど大したことなく、僕が行けばすぐに鎮圧できた。
弱い草食動物…彼らの相手をするくらいなら美瑠とまだ一緒にいたかった、と少し悔いが残る。

あれからさほど時間は経っていない。…もしかしたら、まだ応接室にいるかも。

そんな淡い期待を持ったら僕の身体は素直に歩くスピードを速めていた。
早く、早く、と歩いていけば応接室から一つの人の気配を感じて期待が高まる。

もしかしたら美瑠が待っていてくれてるんじゃないかって……

弾ませた息もそのままに応接室のドアを開けて、美瑠、と呼ぼうとした。…けど。



「あ、おかえりなさい、恭弥!」

「……っ」



嬉しそうに笑って、振り向いたのは歌愛だった。


―――何を期待していたんだろう。

美瑠があぁやって笑って待っていてくれるはず、ないのに。


だって僕たちは……もう、別れたんだから。


美瑠じゃなくて歌愛がここにいることの方が自然だと、わかっていたはずなのに。
…どうして、こんなにも苦しい…?

(そんなのわかりきっていた)

(美瑠の面影を探しても、なんの意味もないことくらい、わかっているのに)


途端に力が抜けていく気がして、僕は歌愛に何もいわず置いていっていた携帯だけをとって背を向ける。



「待って恭弥!私も一緒に帰ってもいい?」

「…好きにすれば」

「ふふ、うん!」



もうどうでもよかった。
美瑠じゃないと何の意味も持たない。誰かが横にいることも、誰かが話しかけるのも、全部。

あぁ、どうして僕は美瑠の手を離してしまったんだろう……

赤ん坊が言う通り、くだらない、一時期の欲のために美瑠を傷つけて。


…結果的に大切なものを失ったのは、僕のほうだ。

後悔なんて今までしたことないし、することは愚かなことだと思っていた。…今更己の行動を後悔してなんになるんだ、と。
でも、愚かなことだとわかっていても後悔せずにはいられなかった。

今でもこんなに美瑠を愛しているのに。
今でも隣にいてほしいのは美瑠だけなのに。


―――現実は、どうしてこうも違うんだろう……

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