1.2



「ここ、ぼくのなんだけど」



晴れたとても天気のいい日に並盛公園の大きな木の下のベンチで本を読むことが大好きだった。
同年代の子たちは少し離れたすべり台やぶらんこで遊ぶ中、少し字が大きい本を持って私はそのベンチで本を読むことが日課になっていた。
公園なのにそこだけひっそりとしていて、時々マナーの悪い大人が缶とかをポイ捨てしているけどそれを片付けさえしていればきれいなベンチだったから、誰にも邪魔されないその空間にいると安心する。

その日だって、いつものように本を持って恐がる子どもたちの隣を静かに歩いて通り過ぎ、ベンチに座って読書にいそしんでいたのだけれど…突然降ってきたその声に私はゆっくりと顔をあげた。

同じくらいの年代の男の子――黒くて短い髪、少し恐そうなつり目――がそこには不機嫌そうに立っていた。
毎日私はここに来ているが、初めてみる子だった。
『ぼくのなんだけど』といわれたということは、どけ、ということなのだろうか。
もし私がもう少し大人だったなら「ごめんね」といってその場をどいたのだろうが、感情表現が薄くてもそこは子ども。
自分の独占欲、というものが存在していたようで、私は真っ直ぐその男の子を見上げて、静かに問うた。



「どうして?」

「は?」

「どうして、あなたのものなの?ここは、こうきょうのばしょ。だれのしぶつでもないわ」



今考えるとやっぱり子どもらしくない。公共の場所だから、誰の私物でもない。
その主張は正論なのだが、子ども相手に言う言葉ではないことは一目瞭然だ。目の前に立っていた彼が理解していたかも怪しい。
いや、彼は理解していただろう。そしてそれと同時に彼も私と一緒で同年代とかけ離れた思考の持ち主だったように思う。

だからこそ、私の言葉に「意味わかんない」と怒ったりせず、ただ、なんだか面白いものを見つけたように笑ったんだ。



「たしかにね」




これが、私と恭弥の初めての出会いだった。


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