10.6



「…もう、絶対に…あんな無茶はしないって約束して」

「……できないよ、」

「して、姫。お願いだから…っ」



恭弥が、泣いているような気がした。
ううん、きっと気がしたんじゃなくて本当に恭弥は泣いていたと思う。
けど私はそれに気づかないふりして抱きしめてくれている恭弥の背中にそっと手を回した。



「約束、できない。きっと私は…同じ場面になったら、迷わず飛び出してしまうから」

「…姫」

「でもね、これは約束できるよ」

「……?」

「自分の身は、自分で守る。恭弥に守られなくてもいいように」



強くなる、そう小さく微笑むと恭弥は驚いたように目を丸くしていたのだが、次第に苦笑交じりの優しい笑みを浮かべてくれた。

まるで仕方ない、と…私の決意を尊重してくれるように。

そんな恭弥の優しさに私は再び泣きたくなった。…本当は、恭弥がすごく心配してくれているのが伝わっていたのに。
それなのに、守られることより守られないことを選んだ私の意志を汲み取ってくれた恭弥の優しさが嬉しかった。



「約束だよ、姫。でも、無茶はしないでね」

「うん」

「あと、いざって時は大人しく守られてね」

「…う……」

「返事は?」

「…………」

「僕の最大の譲歩くらい、聞いてくれるよね?」

「……わか、った」

「うん」



満足そうに頷いた恭弥に少しだけ納得いかなかったけど、あの恭弥が譲歩したのだからこんなわがままは言わない方がいいのだろう。
雨が冷たかったけど、繋いだ手はすごく暖かくて、抱きしめられた身体は熱くて、風邪なんてひきそうになかった。
帰ろう、と言われて私たちは再び帰路についた。


……帰ったらびしょぬれの私が母親にしかられたのは言うまでもない。



(風邪引くでしょ!)
(…ひかないよ…くしゅん!)
(言った側から…お風呂に早く入りなさい!)
(…はい…(恭弥も怒られてるかなー…))


→おまけ。

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