ルージュが運んでくれたもの
雲雀恭弥という人はものすごく硬派だ。
それはもうこれまで女の人一人寄せ付けないほど。
中には「今時流行りの絶食系か!?」と言わせるほど。
だが、そんな彼にべた惚れの彼女ができた。
いや、彼女ではない。何故なら、雲雀の片思いだからだ。
冷たく見えて彼女だけ甘やかす場面は何度も見てきた。
さりげなく「かわいいね」「そういうとこ、好きだよ」と口説いてきた。
だが、何故か彼女…姫には伝わらなかった。
むしろ、「雲雀さんって優しくて、紳士で、素敵な上司ですよね」と言われる始末だ。
そんな雲雀恭弥が、…何故か襟に口紅の痕をつけて帰って来た。
「あれ?雲雀さん、口紅ついてますよ」
「え?…なんでこんなもの…、待って、姫!僕は何もしてないから、」
「…いいんですよ、雲雀さん。私も大人ですから…察することはできます。
でも、できたら…知りたくなかったというか…」
困ったように笑う姫に、どんなことを察したのだ、と雲雀は頭を抱える。
そんな雲雀に姫は言いづらそうにしながら、目線を反らした。
「お姉さんのお店、ですよね?雲雀さんも男性ですからそれくらい…」
「そんなとこ行かないよ」
「え、そうなんですか?」
「好きな人がいるのに、…行くわけないだろ」
逸らされる視線に姫はキョトンとする。
あぁ何故伝わらない!と近くで聞いていた草壁がもやもやしたのは秘密だ。
「雲雀さん…好きな人がいたんですか?」
「…うん」
「…、そう、…ですか…その方には…もう気持ちを…?」
「…何度か伝えてるんだけどね。なかなか伝わらない」
今の状況もまさにそうだ。
口紅がついていたことを弁解しても誤解ばかり。
あまつさえ「好きな人がいるのか」とすら聞かれている。
姫は少しだけ悲しげに下を向くと、…泣きそうな顔で笑った。
「その人と…早く両思いになるといいですね」
「…なれるかは、君次第だけどね」
「え…?」
「僕が好きなのは、姫だけだよ」
真っ直ぐ射ぬかれた瞳に、姫は目を丸くしながらも顔が赤くしていく。
ずっと憧れだと思っていた。
素敵な人だ…でもきっと、相手がいるに違いない。
時々優しい目をしているのは、きっとその人のことを考えているのだ、と。
そう…思っていた。
だけど、今…間違いなく自分を見て…好きだと言った雲雀に、姫は間違いなく、この感情が憧れなんかじゃなかったことを自覚した。
「…私も…大好きです、雲雀さん」
ルージュが運んでくれたもの
後日わかったことだが、あの口紅は酔った雲雀を運んだ姫のものだったらしい。
自分で自分の口紅に嫉妬するなんて間抜けだな、とリボーンはからかったそうだ。
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