教団の森。暗い、深緑の中神田は一心に六幻をふるう。
葉を一刀両断すると違う殺気が感じられ、素早く横へとジャンプした。



「…あら、残念」


聞こえ慣れた声がし、神田は目隠しを外した。

殺気の発信源に口の端をあげながら。



「はっ!甘ぇんだよ」

「またまた残念。わざと殺気をなげかけてあげたのよ?」



レティシアがにこっと笑うと神田はチッと舌打ちする。
まさしくその通りだったからだ。レティシアの気配ではなく、殺気に反応したのだから。

そしてふと昨日のことを思い出す。



「…そういやお前、一体あの後どこ行ってたんだよ」


司令室にいると思ったらいない。
リナリーに聞くとさっき出て行ったと言う。
だから部屋に行ったが誰もいなかった。

レティシアは誤魔化す気満々で、明後日の方向を向いて小さく首を傾げた。



「え〜?何で?」

「別に。ただ気になっただけだ」

「ふぅん…そう」


私が大元帥だって気がついたかと思ったわ。
まぁいつかはバレるでしょうけど。

(でもバレるまで)
(バレるまで…この関係を保ちたいと思ってしまうのは)

(わがまま、かしら?)



「ねぇユウちゃん」

「ちゃんっていうのやめろ」

「あらまだ言ってたの?いいじゃない。これで」

「よくねぇ」


ちゃん付けされると子ども扱いされているようで、対等に扱われてないみてぇで嫌なんだよ。


「…こだわるわねぇ。神田って呼んだらみんなと同じになっちゃうじゃない」


そんなのつまらない。

いや。
自分という存在が同化してしまいそうで怖い。
自分の本当の心を悟られそうで、恐いのだ。
…なんて、絶対に言いたくはないけど。


「ちゃん付けすんな、っつってんだろ」

「……」


同じことを二度言われたことで、ようやく言いたいことがわかった。

つまり、ユウちゃんは『ユウ』って呼んでほしいのね。
(それは一人前だと、認められている証拠となるから)

でもそんなの…絶対に嫌。



「嫌よ!ユウちゃんはやっぱりユウちゃんなのよ!!それより、ユウちゃん鍛錬しようよ〜」

「誰がお前とやるか」



だだっ子のように言うレティシアを簡単に斬り捨てた。

すると酷い!と声をあげる。嘘の泣き真似までしながら。



「いくら私に勝てなくてつまらないからって…!」

「おい、コラ。いつオレが負けた?」

「毎日?」

「…イノセンス発動」

「(ユウちゃんてば本当に単純〜!)」



ふふーっと笑いをこぼすと神田が斬りかかってきた。

もちろんレティシアは風のようにするりとよける。



「あははー」

「待てッッ!!」

「きゃーユウちゃん悪役みたーい!」

「死ね!跡形もなく死ね!」

「あははー」



するりするりと神田の攻撃を全て避けていく。

森にはレティシアの笑い声と神田の怒濤が響いていたそうだ。


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