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「なーにしてんの、お前」

「あ゛?お前こそ何して、」



――ボキッ!!


ぎゃああ!!と男の痛みのこもった叫び声がその場に響き渡る。

男の腕の骨を折った彼は何もないように、…いや、神田を襲おうとした男を虫けらを見るように冷たい目で見下すとまだいる男たちを氷のような目で見据えた。
その目は人を殺すことも何も思わないような冷たさを孕んでおり、男たちは思わず怯んでいた。

…このままではこの男に殺される、と。

仲間たちも見捨てて情けない声を上げながら仲間たちはどこかへ走り去っていく。
そんな後姿を鼻で笑うと彼…ティキは腕を押さえる神田の前に座り込んだ。



「大丈夫か?神田」

「…あぁ」

「その女の子は?」

「…、…教え子だ」

「教え子?…あぁ、この子が喫茶店の…」



神田の腕で気を失っている女の子は可憐な顔つきで、どこか守ってあげたい加護欲をそそられる子だった。
ティキは少しだけ姫を見つめていたが、神田の傷に気が付くと「手当てするよ。オレの家の方が近いから彼女も連れて行こう」と声をかけて立ち上がる。

腕を庇う神田に彼女を動かすのは無理だと思ったティキは神田に「怒るなよ」と言いながら姫をお姫様だっこする。

神田は少しだけ眉を寄せただけで何も言うことはない。
ただ無言でティキの家へと歩き始めたので、ティキも何も言わずに歩き出した。

部屋につくと姫をソファーに横たわらせ、救急箱を用意する。
神田は手慣れた様子で包帯を腕に巻き付けると姫の方へと視線を向けた。



「…何があったんだ?」

「腹いせだ。前にこいつが絡まれてたのを助けたら因縁つけられた」

「へぇ…、そういや…この子…お前を庇ってたな。何にもできないはずなのに…大した女だよ」

「あぁ。…本当だよな」



神田は優しい目で姫を見つめて、そっとその髪をなでる。
その手つきがどこまでも優しいからティキは神田の本気の気持ちを知る。

あの堅物神田が、ねぇ……本当、大した女だよ。


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