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あれから神田は喫茶店に来るときは閉店までいて姫を送るか、護身術を教えた後送るか、いずれにしろ姫を送ることが日課になっていた。

最初、姫は「申し訳ないから」と断っていたが「また襲われた方がオレの良心が痛んで困る」と言って毎日送っていった。


今日も喫茶店が終わって姫が外に出ると神田が電柱のところで待ってくれていた。
その姿を見つけると姫はくすぐったく感じながら小さく駆け足で駆け寄る。



「神田さん、お待たせました」

「おう。…行くか」

「はい。よろしくお願いします」



歩きながら姫は他愛のない話をする。今日のコーヒーは深みがあっておいしかったとか最近筋肉がついたとか。
どうでもいい話のはずなのに、神田は時々相槌を打ちながら聞いてくれた。

そんな神田が心地良くて、姫はますます笑顔を深めていく。
神田も姫の笑顔を見たくて、時々姫の顔を見つめては優しく微笑んでいた。



「それで、」

「あーらら?今日も一緒ですか、お兄サン」

「…っ!」



粘着質な声が響き、姫の肩が思わず揺れ、神田は声の主を睨みながら姫を庇うように背中に隠す。

にやにやとした嫌な笑みを浮かべて現れたのは先日絡んできた男。
しかもその後ろには何人もの男がバットや金属棒を持って睨みつけていた。

…きっとお仲間なのだろう。神田は持っていたバッグを下すと持っていた竹刀を構えた。



「この間あんたに殴られた傷が痛くってさぁ…責任、取ってくれるよな?」

「…うるせぇ、自己責任だろ」

「ちっ!!お前ら、やっちまえよ!!」



神田は姫に「下がってろ」と一言言うと竹刀で男たちを伸ばしていく。
その鮮やかな太刀捌きに「すごい、」と呟きながらも心配でぎゅっと手を握り締める。

なんといっても複数対一人なのだ。いくら強い神田でも危ないのでは、と姫は心配していた。

一人、二人と着実に倒していく神田に焦ったのか、絡んできた男は「調子に乗りやがって」と吐き捨てると鈍くきらめくナイフを取り出した。
しかし、ナイフに動揺するほど神田は喧嘩慣れしていないわけじゃない。
冷静に見つめていたが、同時に二人の男がかかってきて、一人を躱した拍子にナイフが腕に掠ってしまう。



「神田さん!!」

「ふっ…死ね!」



男はナイフを振り上げ、神田へと振り下ろそうとした。…けど。
その間に姫が割って入り、やめさせようと男の腕にしがみつく。

姫!と神田が叫んだのと同時に男は「邪魔すんな!」と叫んで姫を乱暴に振り払い、姫は頭を打って気絶してしまう。
ぐったりとする姫の体を抱き起し「姫ッ!しっかりしろ!!おい!!」と神田が声をかけるが姫の意識は戻らない。

男は嫌な笑みを浮かべながら再びナイフを振りかざし、神田を刺そうとした。


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