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「これうまいな」
「…オレは洋酒は飲まん」
「知ってるっつーの。お前にはやらねぇよ」
「なら言うな」
どこのワインかはわからないが、芳醇な香りを漂わせるワインを傾けるティキに神田は毒を吐きながら緩やかな笑みを浮かべる。
ワインの隣で日本酒を傾けるのだから組み合わせはちぐはぐだ。
しかし、この二人はいつだって同じように飲み交わし、お互いの近況を伝える。
――所謂、幼馴染という二人は幼いころから一緒にいた。
明るいがどこか色香漂うティキは女遊びが激しく、寡黙な神田は武術一筋。
正反対ともいえる二人だが、妙に気が合い、一緒にいることが多かった。
「…その首筋についてるものをどうにかしろ」
「ん?…あぁ、キスマークついてる?」
「……」
「はは、真面目だよなぁ、神田は」
「うるせぇよ」
「…あれだけつけるなっつったのに…潮時かな」
「刺されても知らんぞ」
「あれ?心配してくれてんの?」
「あ?」
「冗談だって!刀戻せよ」
ぎろりと睨みつけて、六幻(竹刀)を突きつける神田に両手を上げながらティキは冷や汗をかく。
この幼馴染には色恋沙汰の話は禁句かというほど過剰な反応を示す。
お堅いよなぁ、とティキは笑いながら再びワインに口をつける。
しかし、この幼馴染と一緒にいるのが気楽であることも事実。
日本酒を傾ける目の前の幼馴染に小さく口の端をあげたのだった。
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