「今日から一緒に働く、お前の相棒だ」




世は幕末。時代のうねりが渦巻く京都のある部屋で姫は運命の出会いを果たしていた。




――――時は遡り、約半時前。

何時ものように遅めの昼食を頂き、怪我をした志士達の治療を行っていたときだった。
父である(しかし血の繋がりはない。所謂養子というやつだ)桂小五郎に話があると言われて父の部屋に行くと一人の少年が静かに佇んでいた。
燃えるような緋色の髪に整った顔立ち。見た目よりも数倍の落ち着きを纏った雰囲気。
女性がほっとかなそう、なんて場違いのことを考えながら少年と向かい合わせになるような形で座った父の斜め後ろに座った。




「緋村、この子は桂姫。私の娘だ。…といっても養子なんだがね。
姫、彼は緋村剣心。今日から一緒に働く、お前の相棒だ」

「「えっ!?」」




父のとんでもない発言に二人して声を合わせる。
「もう息ぴったりだな」だなんて呑気に笑う父に笑い事じゃない、と頭を抱えたくなった。

―――相棒。つまり、影の人斬りの、という意味だろう。
私は昼間は医者として働いているが夜は時代を変えるため人斬りとして動いている。
どう考えても彼が医学に精通しているようには見えないし、刀を側に置いているということはそういうことなのだろう。
…目の前のこの少年にさせるというのだろうか。しかも、私と二人で。




「どういうことですか、桂さん!オレ一人で充分なはず」

「緋村、姫は確かに女だが、今までの人斬りは全部この子がしてきた。いわば君の先輩だよ」

「この人が…?」




信じられないとばかりの目を向けられて少なからずムッとする。
確かに私は女で、男に比べて非力な部分がある。
でも、今まで人斬りをしてきたのは私であるのは事実だし、怪我をしたこともない。
負けず嫌いの私は一言言おうかと口を開きかけたがよく考えれば相手は恐らく年下の男の子だ。
そんな子に張り合っても仕方ない。
力んだ肩を緩めて小さく息をつくと緩やかな苦笑を浮かべた。




「見えないかもしれないけど、本当よ。
改めて、初めまして、緋村剣心くん。これからよろしくね」




ふわり、と微笑みかけたが、彼はただ頭を下げただけで何も返さなかった。
最初からどうやら嫌われてしまったようだが、父は「仲良くしなさい」と微笑んだだけだった。

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