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あの後、どうして私たちの力量を知りたかったのか、説明された。
私は少ししか知らないが、剣心と私の人斬り稼業を受け継いだ志々雄真実という男が京都で暗躍しているらしい。
しかも、この明治政府をぶっ壊そうという理由で。
…まぁ恨まれても仕方がない。自分たちの都合で人斬りをさせ、自分たちの都合で彼を殺そうとしたのだから。
自業自得ではないですか、という私の言葉に大久保さんは「そういわれても仕方がない」と苦笑した。
しかし、この明治という世を再び混乱に陥れるわけにはいかない。
この国を守ってほしい、という言葉に私は小さくため息をついた。
…もし、これが自分の父である桂の言葉であれば即座に頷いていたであろう。
しかし、そういう気持ちになれないのは、…病死する前に「幸せになれ、姫。今までの人斬りをすべて忘れて、幸せに…」という言葉があるからだ。
誰よりも私の平穏を願ってくれた父の言葉を、無下にはしたくない。
だけど……そうもいかないようだ。
私が行かなければ、剣心が行くことになる。
せっかく神谷道場で穏やかに暮らしていた剣心に…もうこれ以上人は殺させたくない。
その気持ちはみんな同じで、みんな「剣心は京都に行かせない」と言ってくれた。
…ほら…こんなにも止めてくれる人がいるんだから……剣心は、行くべきではないんだ。
大久保さんは「一週間後、返事を聞きに来る」と言って部屋を出て行ったので、私もその背を追う。
「大久保さん、私は行きますよ」
「…!姫くん…」
「私一人で十分。だから、剣心はここに置いて行ってください」
「そういうわけにはいかない」
「なぜ?…私が、女だからですか」
バカにされたようで、怒りで目を細めると大久保さんは「違う」と首を振った。
「桂殿ならきっと…君一人を行かせないと思ったからだ」
「…っ…ずるいですね。父の名を出すとは…」
「桂殿はいつも君を自慢していたよ。強く、美しい君を…」
「…それでも。私だけで京都に行きます」
「それは緋村君が決めることだ」
悲しそうに笑う大久保さんに再び小さく息をつくと、一礼して背を向ける。
これ以上言っても無駄なようだ。大久保さんは剣心に決断をゆだねるらしい。
それならば、私も準備しなければならない。長く、なりそうだから。
―――…一週間後。
事件は起こった。…大久保さんが、暗殺されたのだ。
事件現場の近くまで行くと、人だかりができていて何も見えなかった。
…まさか、志々雄真実の…?
「あなたが、沙梛さん…いや、姫さんですか」
「…誰」
「志々雄さんからの伝言です。『来るなら俺の女として来い』だそうです」
どういう意味だ。
意味がわからず、眉を顰めてその意味を考える。
とりあえず、よい意味ではないということだけはわかったので、
「『おとといきやがれ』」
「…!」
「そう志々雄真実に伝えなさい」
「ぷっ…ははっ!!面白い人だなぁ…伝えておきますね」
「あなたも大概変な人よ」
普通そんな伝言伝えない。
そうかな?と首を傾げた気配があったが、それ以上は何も言わずにどこかへ消えていく。
背後を取られていたから、少しだけ緊張した肩を下すと、神谷道場へと向かう。
…剣心…あなたは、どんな決断を下したの…?
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