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さぁいらっしゃい!今流行りの人形劇だよ!

そんな声が聞こえてきて、思わずそちらへ目を向ける。
…人形劇…すごい、初めて見た。
じっと見つめていると、「…見たいか?」とリヴァイに聞かれる。

え、と驚く暇もなく、リヴァイは私の手をひくと、その人形劇の席へと座らされた。
いや、いいんです、と言いたかったが、すでにリヴァイがお金を払ってしまって閉口する。


「…ありがとうございます」

「オレも気になっただけだ」


だから、気にするなということだろうか。
…何か…小さい頃から変わらないな。

ぶっきらぼうだけど、…いつも私のしたいことを優先してくれた。


人形劇が始まる。

内容はありきたりだった。
貴族の男と、平民の女の恋。

身分違いの恋に苦しむ二人に、…少しだけ羨ましく思った。

近くにいるのに…私はこの思いを伝えることもできない。
…思いが通じ…一緒に悩み、悲しむことができることのなんて幸せなこと。



「…エミリオ」

「はい」

「オレは…フィリーを守れなかった。…守ってやりたいと…思っていたのに」

「ーーっ」


守ってくれていたよ…!
あなたは、ちゃんと、私の手を掴もうとしてくれていた。

そう伝えられたら、どんなにいいか。
だけど、私が生きていることを知られたら、兵団が…リヴァイが…っ



「伝えたいことも、伝えられてない。…だから、オレは…未だにあいつのことを忘れられないのかもしれない」

「……、…」

「オレは…フィリーが、…本気で、好きだった」

「…っ、リヴァイ、さん…」

「…ふ、何を今更…だよな。…すまない、忘れてくれ」



苦く笑ったリヴァイに、胸が締め付けられる思いがした。

こんなにも…私の存在が、彼を悲しませている。
いっそ、もう忘れてください、と言えたら、どんなにいいか……

…っ、だけど、忘れて、と言えない私は…本当にずるい。


忘れてほしくない。

だって、私は…フィリーは、ここにいるんだから。

私も…あなたのことが…好きだからっ…!!





ーー同時刻


「まさか…そうか、そういうことか」


記された書類をぐしゃり、と握りつぶす。

…そして、決意した。

この事実を…リヴァイにも、伝えると。


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