Merry・Go・Round
「やぁ」
“アラウディさん!”
医療室に入ってきたアラウディさんに笑顔がほころぶのがわかった。
アラウディさんは緩やかな笑みを浮かべて「はい、お土産」とケーキを手渡してくれる。
私の好きな町のケーキ屋さんのショートケーキ。
ありがとうございます、という気持ちを込めて抱き着くとアラウディさんがぽんぽんと頭を撫でてくれた。
紅茶を淹れます、と医療室のキッチンに入るとアラウディさんがケーキの準備をしてくれる。
アラウディさんとお付き合いするようになってからアラウディさんはよくこちらに来てくれるようになった。
どうやらお兄さまのところには行かずに私のところだけ来ているらしい。(Gさんがそのことで嘆いていた)
お茶の準備ができるとささやかなお茶会の始まり。
最近、おいしいお店ができた。そういえばお花屋さんのベティさんが妊娠した。など。
お互いに相手に伝えたかった話をたくさんする。
楽しい時間を過ごしていると突然アラウディさんが真剣な表情になる。
「…実は僕の組織の医療班の班長が寿退社することになった」
“それは、おめでとうございます”
「セリア…僕の組織の医療班に来る気はない?」
“え…”
「僕の妻として」
“…っ!?”
あまりの驚きでセリアは持っていたカップを思わず落としていた。
あ、と慌てて震える手でこぼれたカップを元に戻し、紅茶を拭こうと立ち上がる。
その瞬間、アラウディさんは私の手をとって、私を抱きしめた。
「君を一生守りたい。…僕の近くで、君を守らせて」
アラウディさんから伝わってくる温かな体温。そして、幸せな言葉。
あぁ、こんなとき、アラウディさんは一体どんな顔をしているのだろう。
抱きしめられているのはとても幸せだけれども、大切な言葉を囁いてくれているあなたが一体どんな顔をしているのか知らないのはとてももったいない気がした。
抱きしめているアラウディさんにぎゅっと抱きしめ返してこくりこくりと強く二回うなずく。
私も、あなたのそばにいたい。
妻として、あなたを支えたい。
そんな気持ちを込めて、ゆっくりと。
アラウディさんは嬉しそうに笑うとそっと私から体を離す。
…あぁ、ようやく、あなたの幸せそうな顔が見れた。
「誓うよ。永遠の愛を、君に」
こんな時に愛を伝えられないのが、とてももどかしいけれど、口の形だけで伝える。
私も、愛しています、と。
目を細めて笑うアラウディさんの顔がゆっくりと近づいてくる。
ここは教会でも、みんなの前でもない。それでも、私たちにとって大切な誓いだった。
私もそっと目をつぶると、世界で一番幸せな口づけを交わしたのだった。
Merry・Go・Round
くるくると回る大切な思い。
それは巡り巡って、私たちに帰ってくる。
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