brother



バキッと鈍い音がして、アラウディさんの体が吹き飛ぶ。
慌ててアラウディさんの側に駆け寄ろうとしたけど、アラウディさんは静かに手をあげて制する。
無言の「来るな」の合図に小さく眉を顰めるけど、彼の意思を尊重して動くことはできなかった。



「…気がすむまで殴りなよ、ジョット」

「いや、これ以上は殴らない。…これはセリアが感じた痛みの分だ」

「……甘いね、相変わらず」



思いが通じあって、私たちはボンゴレの屋敷へと戻った。
お兄様が街へ息抜きに行ったらどうか、と言ってくれなかったらこうしてアラウディさんと一緒にいることはできなかっただろう。
…私の思いに気づいて、背中を押してくれたお兄様にちゃんとお礼がしたかった。
アラウディさんと一緒にお兄様の部屋に入って、私たちの姿を見たとたん、お兄様はアラウディさんを殴っていた。


倒れているアラウディさんにお兄様は立ち上がるために手を差しのべる。
アラウディさんはお兄様の手をとり、素早く立ち上がった。
そっとアラウディさんの傷を労るように側に寄ると、アラウディさんは目を細めて私の髪を優しく撫でる。
大丈夫だよ。と微笑むアラウディさんによかった、と息をつくと「あ゛ー!!」と突然お兄様が唸りだす。

突然のことで、びっくりして振り返ればお兄様がなぜか頭をがしがしと掻き乱していた。



「オレの…オレのセリアがーー!!!」

「うるさいよ、ジョット」

「あぁあ!やっぱり許せん!!あと2発くらい殴らせろ!オレの可愛い可愛いセリアをオレから奪った罪で!!!」

「何それ馬鹿なの?」

「セリア、本当に本当にこいつでいいのか!?本当に好きなのか!?もう一度よく考え直せ!!」

「馬鹿なこと言わないでくれる」

“本当に好きです、お兄様”

「…………」



項垂れた。盛大に。今まで見たことないくらい。
お兄様、と項垂れるお兄様の肩に手を置くとお兄様は弱々しく顔をあげて「本当にいいんだな」と確認する。
こくり、と小さく頷きながら微笑むとお兄様はもう一度項垂れて、すぐに顔をあげた。
そして、私の頭をぽんぽんと撫でると「強くなったな」と笑う。
その暖かさが心地よくてふわりと笑うとお兄様は小さく苦笑を漏らした。

まだまだ妹離れはできそうにないな、と。



「アラウディ、セリアをよろしく頼む」

「…任せなよ」



この子は、命に代えても守ってみせるから。


真剣な表情のアラウディさんがかっこよくて、思わず頬が熱くなる。
そんな照れている私とアラウディさんを眩しそうに見つめて、お兄様は小さな笑みを浮かべた。



「絶対、幸せになれ、セリア」



お兄様の精一杯の愛情表現に胸が熱くなって、泣きそうになりながらこくりと大きく首肯く。

ありがとう、お兄様。
必ず、幸せになります。


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