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「ジャッポーネに行っておいで」



そうまるで隣の家に遊びに行っておいで、というように九代目は私に告げた。
でも内容は時差が8時間もある遠くの国……日本に行けというもの。
これにはさすがの私でも驚きを隠せない。

え!?と聞き返せば九代目は穏やかな笑みを浮かべる。

包み込むような、優しい笑み……
この笑顔が大好きだけれど今はそれどころじゃなかった。




「この間リボーンがジャッポーネに行ったことは知ってるね?」

「は、はい。リボーンから直接聞きました」




つい数日前の話だ。
突然私のところに「ちゃおっス」とお馴染みの挨拶を口にして、世間話も何もなしにいきなり「ジャッポーネに行くことになった」って言われた。

何でも十代目候補がジャッポーネにいて、その家庭教師に選ばれたって。
その時はまだ十代目候補がジャッポーネにいることを知らなかったから、すごくびっくりしたけど…少しだけ会ってみたいなぁとは思ったよ。

それにリボーンが楽しい旅になりそうだ、ってニヒルに笑ってたし。

(ちょっと悪巧みしてそうな顔だったけどね!)




「この前リボーンに報告を貰ったのだけど、とても楽しそうでね。
そこでふと思ったのだよ。美瑠に「普通の女の子」として楽しい思い出があるのかってね」




そういわれてしまうと…ちょっと困っちゃう、というのが私の本音。

まず普通の女の子、っていうものがどんなものかがわからない……
でも私は今まで充分幸せで楽しい思い出がたくさんある。
普通の女の子じゃなくても、これ以上の幸せなんてないの。

でも、九代目にとってはそういうわけにもいかないのだろう。
一般人として過ごしたことのない私に、少しでもいいから一般人として過ごして普通の幸せというのを感じてほしいという願いを持っていたことは知っていた。

そして、私がそんな幸せに少しだけ憧れていたことを、九代目は知っていたのだろう。




「だからね、美瑠もジャッポーネで綱吉くん達と一緒に楽しい思い出を作ってきてほしいんだよ」

「いいんですか…?」

「もちろんだよ。行っておいで……ジャッポーネに」

「っ、はい!」




行ってきます!と言うのと同時に走り出して九代目の部屋から出て行く。
九代目はすごく楽しそうに笑って「気をつけていくんだよ」と声を掛けてくれた。

ジャッポーネに行ける……
それに、十代目候補――――沢田綱吉くんとも会える…!

さっそくリボーンに連絡しなきゃ!
きっと驚いて、喜んでくれるよね。

にやける顔を必死に抑えて自室に入って大支度する。
兎に角いる物だけをすべて詰め込んで後の物は運んで貰おう。
パスポートと愛銃、カードとかお金、携帯とかを入れて飛行機に向かった。
すでに九代目が準備していてくれて、後は私が乗り込むだけだった。

あっ!その前にリボーンに連絡連絡っと!

リボーンの携帯番号を取り出して通話ボタンを押すと「ちゃおっス」と何日かぶりに彼の声を聞いた。




「Ciao!久しぶり、リボーン!」

「美瑠か。どうした?」

「ジャッポーネに行くことになったの!今からそっちに行くからね」

「お、ついに来るのか」

「知ってたの?」

「九代目が悩んでたからな。楽しみに待ってるぞ。ツナも喜ぶ」

「うんっ!また後でね」


Venne alla durata.――時は来た――
Un equilibrio comincia a finalmente scuotere.――天秤はついに揺れ動く――
Ora, È l'inizio di una storia!――さぁ、物語の始まりだ!――

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