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「美瑠!!大丈夫か!?」
ノックもせず、大きな花束を抱えて入ってきたのは私の兄分ディーノ。
一応私も女だよ?ノックくらいしてほしいな。
…って、もう遅いね。
「リボーンから聞いた!お前声が…!!」
「(そんなに慌てなくても…)」
ディーノの慌てようが大げさだったから、思わず苦笑してしまう。
そんな私の様子にディーノはあっけにとられたのか、軽く固まってしまった。
多分、私が声をなくしてもっと落ち込んでいるんだと思っていたのかな。
「元気…そうだな…」
にっこり笑ってこくりとうなずいた。
「ホントに…出ないんだな…」
まるで痛みがあるように、ディーノが顔を悲しそうにゆがめる。
そんな顔しないで……私、そこまで落ち込んでないよ?
そう慰めるように笑いかけるとディーノは「悪ぃ、」と小さく笑い返してくれた。
落ち着いたのかディーノは持っていた花束を机の上に置くと、私の隣にあった椅子に座る。
「知ってるのか?アイツ」
「(アイツ?)」
「お前の、彼氏?」
「(…彼氏って言われるとすごく恥ずかしいかも…)」
何だか、家族に恋愛話をするのはくすぐったい。
思わず頬が熱くなるとディーノが目を瞬かせる。
…私が照れるなんて珍しいからだろう。
「で?知ってるのか?」
少し俯いてゆっくりと首を振る。
それはつまり、知らない、ということ。…言えなかった、ということ。
そんな私にディーノは「知らないのか!?」と驚く。
「いいのか?言わなくて!」
「(言えないよ…)」
携帯にそう打ち込んで、ディーノにその画面を見せる。
最近私が使っている唯一の意思疎通方法。
「言えない」という言葉にディーノは何でだ?と首を傾げる。
彼氏なら、なんでも言えるだろ、と。
でも、彼氏だからこそ、言えないんだよ。
「(迷惑かけたくないもん)」
「迷惑だって、言われたことあるのか?」
ディーノの声が低くなる。
そんなディーノに慌てて、首を振った。
「(ないよ。絶対にそんなこという人じゃないってわかってる)」
「…?じゃあなんでだ?」
「(…恭弥は私のこと、大切に思ってくれてる。守ってくれる。
そんな私がみんなを守るために声をなくしたって知ったら…きっと、傷つくと思う)」
私と恭弥は、似てると思うの。
守るためなら何でもするし、そのための努力を惜しまない。
そして、それが守れなかったら……自分を責めてしまう。
(私がそうだから…きっと、恭弥も、同じなの)
「…そっか……でも、だからこそ、言うべきなんじゃないか?
もし、反対の立場だったら、美瑠もそいつに言ってほしいだろ?」
「(あ……)」
そういわれて、初めて気づいた。
確かに恭弥が無理していたら、私はそのことを恭弥から聞きたい。ちゃんと、伝えてほしい。
私は自分を責めるかもしれないけど、その分、その傷を治すために傍にいるはず。
…そっか、そうだよね。私…恭弥にちゃんと、言わないと。
「その様子だと、もう大丈夫そうだな」
「(…うん、ありがとう!ディーノ)」
「礼なんていらねぇよ!…おっと、すまねぇ。もういかねぇと」
「(うん。来てくれてありがとう)」
「かわいい妹分のためだもんな!当然だろ。また来るな!」
ニカッと太陽のようなまぶしい笑顔を浮かべて、ディーノは私の頭をくしゃりと撫でる。
それがくすぐったくて、嬉しくて、軽くなった心に笑顔を浮かべる。
ありがとう…お兄ちゃん。
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