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「郁織の友だち、だったよね?」

「……!」




郁織、海郁織。

その名前はとうの昔に忘れた、いや強制的に自分の中から忘れさせた名前。
……私の中学の時の、上辺だけの、トモダチ。

あぁ友だちだなんていうのも反吐が出るくらい嫌だ。
最悪だ、思い出すなんて。今日思い出したのは前兆だったんだろうか。
一瞬だけ浮かんだ本当の笑みが瞬時に消えて、厄介な時に浮かべる愛想笑いに変わる。

私はなんて滑稽なんだろう。
一分前の自分を呪い殺してやりたいくらい、憎い。




「そう、です」

「なんで君がここに?君は一般人だったはずだけど」

「…一般人じゃなかったものですから」

「君、何者?」




恐らく私に疑いを持ったのだろう。ぴりぴりした殺気が私に突き刺さる。
それなのに殺気を向けられた本人である私は心の中で冷静に感心していた。

十年も経った貴方はこんな殺気も出せるようになったんですね。
昔はたいした殺気も出さなかったのに…正真正銘のマフィアってところですか。

その指にはまっているリングは、ボンゴレリングの雲のリング。
つまりは彼がボンゴレの雲の守護者……噂に聞いてはいたけれど、本当だったなんて。
それに……それに、みてしまったものが、もう一つ。

左手の薬指に嵌った、何の変哲もないシルバーリング。

あれは、どこからどうみても……




「結婚、なさったんですか?」

「…何、急に。しかも君は質問に答えてない」

「そうですよね…十年経てば、あの子と結婚してもおかしくない、か…」




ふ、と自嘲的に笑えば私の言葉の意図が読めなかったのか雲雀さんは怪訝そうな顔をしてトンファーを構えた。

彼の殺気からして本気で私を殺す気らしいが、私の体はなぜか避けようとか反撃しようとか全く思わず、動くことはなかった。
ここで雲雀さんに殺されても、いいかもしれない。
むしろ、本望なんじゃないかな?
そんなことまで思い始めた私は本当にバカだ。

(でも、痛みを増した心臓を収める方法がわからないから、)

咬み殺す、と十年経っても変わらない言葉を口にしてトンファーを振り下ろす。
目の前に銀色が迫って……もう、私の人生終わったかな、と思い始めた、とき。

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