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沢田綱吉の部屋から出て、一度は来たことある廊下をぼんやりと見つめる。
何も変わらないな……この、屋敷は。
思わず少し感傷が入った自分にダメだ、と強く頭を振ると出口に向かって歩き出す。
まだ覚えている…はず。
いや、頭が忘れていても、体は覚えているはずだから。
ほら、その証拠に私の足はしっかり迷うことなく出口に向かっている。
すたすた、とテンポよく歩いていると前から誰かがくる。恐らくボンゴレ幹部の部下かなんかだろう。
…面倒だ、マフィアは見知らぬ顔がくるとすぐに騒ぐから。
ちっ、と舌打ちしたい衝動に駆られつつも私にはやましいことなんて何にもないから真っ直ぐとその人物の顔を……
―――……嘘、でしょう……?
どうしてあなたがここに……?
……いや、あなたのことだからリボーンに巻き込まれたんでしょうね。
そしてあなたも喜んでリボーンに巻き込まれた。
前から歩いてくる人物に私の心臓が今まで止まっていたんじゃないかってくらいバクバクと暴れ出す。
一歩、一歩、近づいてくる、彼。
あぁ…十年経っても変わらない、あなた。
きゅうっと胸が締まって、息をするのさえもできなくなる。
「…君は……」
「あっ……」
信じられないことに、綺麗なふわふわの黒髪を跳ねさせながら彼の鋭い眼差しが私を射抜く。
黒スーツを一つも崩すこともなくきちんと着こなした、元風紀委員長の雲雀恭弥さんは私の前で立ち止まる。
奇跡、だと思った。
彼が私の前に止まったことが。
十年前は……“あの子”しか目に入れてなかったのに。
それに、私自身の感情にも戸惑いを隠せなかった。
私は十年前……この恋を捨てたはずなのに。
もう雲雀さんのことは諦めようと、そう決心したはずなのに。
なのに、なんでこんなにも……彼を見ると心臓が高鳴るんだろう。
「……空、翠徠?」
「……っ!覚え、て…」
嘘、本当に?
私のこと、覚えててくれたんだ…!
ううん、私だと、気づいてくれた…!
そんな私らしくない喜びが一瞬だけわき上がる。
仕方ないでしょう?初恋の、人なんだから。
初恋の人が覚えてくれていたら、私だと気づいてくれたら、嬉しいに決まってるでしょう?
でも雲雀さんは私の喜びを打ち砕くのが上手いみたいで、その後に続けられた言葉に絶望を抱いた。
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