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「……秘密です」




クスッと小さく笑って唇の前に人差し指を立てた。
すると雲雀さんは驚いたように目を見開いて私をじっと見つめる。
その驚愕の表情は初めて見るカオで、少しだけ、嬉しかった気がする。

そっとテラスの縁に手を添えて再び満月を見上げた。

あぁ、とても綺麗。
凍えるような冷たさを持った月。
どこまでも寂しい夜空にぽつりと一人で浮かび上がって、なんでもない顔をしている。
自分で輝けないのに太陽の光を浴びて、煌々とどこまでも高貴に光り輝く。

素敵……とても、綺麗。

―――でも、これはただの憧れ。

わかってる……
私が持てないもの。私が絶対に手に入れられないもの。
誰かを笑わせたり、誰かを愛したり、だれかの光を浴びて自分が光ることなんて……絶対に、できない。
…でも仕方ないの、それが私の心だから。




「君は僕以上に雲の守護者らしいね」

「お褒めの言葉光栄です。ですが…これでお別れです」




トンッと身軽にテラスの縁に立ち、雲雀さんを見下ろす。
雲雀さんは目を細めて私を見上げるだけ。




「Arrivederci」




また逢いましょう。

そう呟いて黒い薔薇にキスを落とし、ふわり、と床に投げ落とす。
私が一人任務の時はいつもこの黒い薔薇を置いていく。

これが私が殺した証拠。neve neraが生きた証。

その薔薇だけ残して私は姿を消す。…何も、なかったかのように。

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