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「郁織のこと、友人だなんて一度も思ったことないくせに」
「そんなこと…っ」
「ないって?」
私の言葉に、雲雀さんの声が重なる。
あるわ……あるに、決まってる。あんな人……
図星なだけに口を閉じた私に雲雀さんはやっぱりというようにニッと口の端を格好良くあげた。
つぅっと親指で私の唇をなぞり、物欲しそうな表情で、私を見つめる。
(その姿は、妖艶で、美しく)(…拒めない、と思った)
「僕のものになりなよ…翠徠」
「んぅ…っ」
噛みつくような、キス。
少し乱暴で、でも巧みな舌使いに私の意識は飲み込まれていった。
横を向いていた私も今は車の背もたれに背中を押し付けられて、雲雀さんは片足だけをシートに乗せて前屈みになりながらキスしてくる。
ふ、という私の鼻にかかった甘い声に、生理的に出る涙。
それらが雲雀さんを掻き立てるように流れ出す。
これは……裏切り行為、だ。
雲雀さんは郁織を、私はヒットマンとして背中を預けてくれる、誰かを。
でも―――止まらない。
初恋の人にあぁ言われて…私の中の“女”が叫んだの。
欲しい……彼が、欲しい、って。
自然に私の腕は雲雀さんの首に絡んでいて、もっと、もっと、とキスを深くしていく。
(誰……あなたは、誰?今、雲雀さんにキスしているのは、誰…?)
(私じゃない…私らしく、ない、こんな、の…っ)
貪るようにキスをしながら雲雀さんが私のスーツを脱がせていく。
雲雀さんが私の体に触れるたび、私は甘い声をあげた。
フッとニヒルに笑う雲雀さんに、欲情する。
―――あぁこんなの、私らしくない。
(でも、現実、だ)
こうして私は人を裏切る。
(私はどこまで堕ちていくのだろう?)
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