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ちらりとリボーンを見ればあからさまに不機嫌さを醸し出していた。
周りの人間はそれなりに敏感なのかリボーンの殺気に怯えて距離を置き始める。

あぁだから嫌なのよ、パーティーなんて。




「お嬢さん、お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

「…リゼですわ」




とりあえず偽名を名乗っておけばリゼさんですか、と青年は嬉しそうに顔を綻ばせた。

その様子にリボーンはハッ!と鼻で笑っていたが。
どうせ「おめでたい奴だな」って思ってるんだろう。…否定しないけど。

偽名ともわからず、私の顔も知らない、リボーンに気付かない。

……この情報から判断する限り、この男はどっかの小さなマフィアの人間だ。


私達が相手するほどの人間じゃない。

さっさと適当にあしらってこの会場から出よう、と決めると、ニッコリといつもなら絶対に浮かべない上手な愛想笑いを創り出す。




「ごめんなさい、わたくし、そろそろ兄の所に戻らなければなりませんの」




自分で言ってて寒気がした。うわ、鳥肌がすごい。
わたくし、とかそんな一人称久しぶりに使った。あぁ似合わなすぎ。

リボーンも必死で笑いを咬み殺して……は、なかった、か。ただ無表情。

少し困ったような表情をすれば青年は「そう、ですか…」と落胆する。
このお坊ちゃんならあと一押しすればきっと見逃してくれるはず。

しつこい男は嫌われる、って、ね。




「兄に…心配かけたくないんです…」




わざと視線を下に向けてぎゅっとドレスの裾を握る。
そうすれば表情は暗く見えて、真実みが出ることを私はわかっていた、けど。

うわぁ。何これ、本当、気持ち悪い、わ。

何が「兄に心配かけたくない」よ。鼻で笑っちゃう。兄なんていないもの、一人っ子だから。
しかもこんな如何にもいい子です、発言。…吐き気がする。

でもここは我慢よ私。これでもうこの男は………私を解放するしかなくなる。




「…お兄さん想いなんですね……わかりました、」

「(よし、終わったわね)」

「僕も一緒にお兄さんに挨拶します!」

「では私はこれで…………え?」




何、こいつ、今、なんて、いいやがりました?
あぁいけない。思わず口が悪くなってしまった。

でも…本当、信じられない。一緒に兄に挨拶する?…空気読めないのかこのお坊ちゃん。

なんだか妙にキラキラして「オレって頭いい!」みたいな顔してるの。バカよ、貴方。
さすがの私もイラッとしてしまったわ。…本当、何なの、一体。

思わず極上の作り笑いも引きつってしまった。

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