2
あろうことかリボーンは、この大勢いるパーティー会場で私の前に片膝をついて紳士的に手を差し出した。
その姿にみんなが気づかないはずなく。
一気にざわり、と騒ぎ始める周囲にちっ、と舌打ちしたくなった。
何考えてるのよ、リボーン。この意味わかっているの?
そう心の中で呟けばもちろんだぞ、と頭に響くリボーンの心の声。
リボーンが片膝をつく。…それは忠誠の意を示しているのと同等ということ。
つまり……本気だと、本気で…私を愛しているのだと。そう言っているのと一緒なのだ。
ここまでされて「嫌」といえるほど私はすごい人間じゃない。
ひしひしと伝わってくる女性の嫉妬の…否殺気の視線に小さく息をついた。
「…エスコート、お願いできるかしら」
「喜んで。お姫様」
リボーンは満足そうに微笑んで、重ねた手を引いてホールに入る。
曲の途中だろうが人が一杯だろうが私達には関係ない。
それなりに嗜んでいる私とリボーンはすぐに曲に合わせて踊り出す。
…シックなドレスだからあんまりダンスが似合わない……チークならまだ、似合うんだけど。
だからといってチークのような密着するダンスはお断り。…今も充分密着してるけど。
でもチークダンスっていったらどうしても私には恋人同士の甘いダンス、というイメージがあるから。
私達は恋人同士でもなんでもないし。
途中綱吉の、リボーンに向かう殺気が感じられたけど足を止めず。
寧ろリボーンなんて勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。…勝ち負けなんてないはずなのに。
「…翠徠」
「何?…言っておくけどさっきのこと、許してないからね」
「仕方ねぇだろ?あの場であぁしないとお前は踊ってくれねぇから」
「……もっと、他のやり方があるでしょう」
わざと足踏んでやろうかしら、とまで考えてターン。
ふわり、と受け止められてリボーンはニッと口の端を格好良くあげた。
“好きな女と踊りたかったんだ。”
そう甘い声で囁かれて無意識のうちに顔が赤くなる。…調子狂う、な、本当。
その笑顔と声は反則だと思う。
何も言わず、ただ黙々とダンスをこなしていればチャン、という楽器の揃った音が終わりを告げる。
わぁっと会場内が盛大な拍手に包まれ、私達や周りのカップルがお辞儀をしてホールから出て行った。
……まだ踊り足りないっていうカップルもいて、残っていたけど。
私はこれ以上踊りたくなかったからホールから出るとリボーンもしょうがなさそうに隣を歩く。
リボーンとしてはもっと踊りたい、という心境なんだろう。私が知ったことじゃないけど。
熱くなった体を冷やそう、と外に近づけば、
「お嬢さん、先ほどのダンスはとても素晴らしかったです」
「……ありがとう」
誰だ、この青年。
そう心の中で呟きながら愛想笑いを浮かべる。
如何にもお坊ちゃん、という風貌の男は金髪を靡かせて私の前に立ちはばかった。
しかも隣にはしっかりパートナーであるリボーンもいるのに、だ。
命知らず…否世間知らずだ、とまたまた心の中で溜息をついた。
こういう人間がいるから身の程知らずが現れるんだ、と。
リボーンはあからさまに不機嫌顔になり、男に対する殺気がだだ漏れしていた。
……痛いほどのそれに全く気づかないこの男もこの男だけど。
面倒なことになった。
(そう、彼女は呟く)
- 82 -
*前次#
back
ページ:
ALICE+