こんなにも優しい、関係



真っ白で冷たい雪が僕の頬に触れてゆっくり溶けていくのを感じながら空を見上げる。
黒いスーツに黒い車、それに反するように僕の首に巻かれている、白いマフラー。
すっかり僕の匂いが染み込んでしまったこのマフラーを、静かに巻き直した。




〜メーデー、メーデー〜




「わぁ…!雪ですよ雪!」

「…そんなに喜ぶことかい?」


毎年降ってるでしょ、と言うと姫は拗ねたように口を尖らせて、それはそうなんですけどーと呟き、再び羨ましそうに窓の外を見つめだす。
その横顔には今すぐにでも外に出たい、って書いてあって。
わかりやすい、と呆れにも似た笑みを浮かべると応接室にある僕専用の椅子から立ち上がった。


「…見回り行くんですか?」

「そうだよ。わかってるならさっさと準備して。置いていくよ」

「…!はーい!すぐ行きます!」


嬉々とした表情を浮かべる姫に苦笑が漏れる。
なんていうか…現金な子だよね。
こういう時だけの察し方は人一倍うまいんだから。
姫は手編みだと自慢していたお気に入りの白いマフラーを巻いて、スキップでもし始めそうな勢いで外に出て目を輝かす。


「綺麗…!」


まるで子供のように(…今も充分子供だけど)はしゃぎながら雪を丸め始めた。
僕が見回りっていうの聞いてなかったの?って言いたかったけど、無邪気な姫を見ていたらそんなこと言う方が無粋な気がして。
仕方ない、と諦めてはしゃぐ姫を眺めることにした。

……けど。


「……ワォ、僕に喧嘩売ってる?」

「喧嘩じゃなくて雪合戦の申し込みです!」


あろうことか僕に雪玉を投げつけてきた。
もちろん避けたけどね。
ニヤリ、と狩りの前のような笑みを浮かべると少しだけ姫は顔を引きつらせた。


「いいよ…咬み殺してあげる」

「雪合戦なのに命の危機…!!」


わー!とか奇声をあげて逃げていく姫に逃がさないよ、と呟いて一瞬のうちに雪玉を作って姫の背中目がけて投げつける。
ただ姫は人より少し運動神経がいいからか辛うじて避けられてしまった。
…僕も本気で投げてないしね。


こうして僕と姫の雪合戦は続いて姫が体力切れで降参したのを幕切れにこの雪合戦は終わった。
雪で遊んだせいで手先がかじかんで、しかもかなり寒い。
思わずくしゅんっとくしゃみすると姫がびっくりしたように僕を見つめた。


「雲雀さんなんで上着が学ラン一枚なんですか!?それじゃ風邪引きますよ」


これ巻いててください、とふわりと白いマフラーが首に巻かれる。
いらない、って言ってみたけど姫は無視してずっと巻いててくださいね、なんて笑った。

…どうも僕は姫がたまに向ける満面の笑みには弱いみたいで。
僕は無言でそのまま白いマフラーに顔を埋めた。



こんなにも優しい、関係

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