Il giglio di un fiore
バキッと骨の折れる音がしたと同時に肉の塊が地に沈む。
その様子を冷ややかに見下ろしながら僕は裏路地から出ていった。
今日も手応えのない任務…あぁ、苛々する。
何で僕が雲の守護者とかいうやつだからっていうだけでこんな簡単な任務をしないといけないんだ。
こんな仕事、下っ端にでもやらせればいいのに。
つまらない。
もっと骨のあるヤツと戦いたい。
……あぁほらまた苛々してきた。
苛々を吐き出すようにトンファーを一振りして付着した血を払う。
そしておもむろにスーツの内ポケットから携帯を取り出すと草壁に繋げた。
任務が完了したこと。
後始末をしておくこと。
それだけを一方的に伝えてからさっさと携帯を切った。ついでに電源も落として。
(どうせ綱吉あたりがまたかけてくるだろうから)
返り血がスーツについているのに気がついてもっと不快感が積もる。
むっと眉を顰めると即座にスーツの上着を脱ぎ捨てた。
こんな血がついたスーツ着ているなんて、気持ち悪い。
あぁもうネクタイもなんだか鬱陶しく感じてきた。
これも外しちゃえ。
ヤケになっちゃってるみたいで、僕はシャツだけという軽装になった。
そう言えばあのスーツかなり高いって綱吉が言ってたような気がするけど……
ま、いいか。
僕の知ったことじゃないし。
トンファーだけを仕舞ってゆっくりイタリアの街を歩いていく。
綺麗な街並みに、幸せそうな顔してすれ違う人々……
(あぁ、僕とは大違い)
――――トントンッ
「…は?」
突然叩かれた僕の肩。
殺気もなかったから僕には珍しく警戒心もなく無防備にも振り向いてしまった。
無表情で振り向けば…そこには一人の少女。
しかも日本人。
このイタリアの街には似つかわしくない黒髪に思わず目を見張る。
黒い長髪を靡かせて、少しだけ息を弾ませている彼女。
その手には…僕が捨てたスーツ。
彼女はニコリ、と微笑んでそのスーツを僕に差し出した。
きっと彼女は親切で拾ってくれたんだろう。…けれど僕にとってはそのスーツは捨てたもの。
つまり、不要物。
「いらない」
「…!」
「捨ててよ、そんなもの」
一般人らしき彼女にそう冷たくあしらって背を向ける。
今の僕には彼女の好意さえも鬱陶しく感じられたから。
彼女は驚いたように目を見開いてその場に立ちすくんでいた。
でも彼女は慌てて僕のシャツの袖を掴んで引き留める。
他人に触れられるのが嫌な僕には不快感でいっぱいになったけど、彼女は一般人。
すぐに殴るわけにもいかなくて少し振り向いてから思いっきり睨んだ。
案の定、彼女はビクリと肩を揺らしたが怯えた様子はあまり見られない。
普通の一般人なら僕の一睨みで腰くらい抜かすのに……
彼女はパッと僕に何かを押し付けてどこかに走り去ってしまった。
それはあまりにも僕には予測不可能すぎる行動で。
ある意味ぽかんとしてしまって遠ざかっていく背中を黙って見つめていた。
でもあっけにとられてしまったのも一瞬。
すぐに気を取り直すと一体何だったんだ、と眉を顰めて、その押し付けられたものに目を向けた。
僕の手の内には凛と瑞々しく咲き誇る、
一輪の百合
(本当に一体何なんだ、彼女は)
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