Una stella cadente seria



「ねぇ海鈴、お腹空かないかい?」

『…空いちゃいました』

「ご飯、一緒にどう?」





行きたい!とばかりに大きく頷く海鈴にじゃ、決まりだね、と笑う。
一度海鈴と一緒に出かけたかったから、丁度良かった。

海鈴はちょっと待ってて!と書いてから店の奥に入っていく。
店の奥は海鈴の私室らしくて、そこで生活しているみたい。きっと着替えに行ったんだろうね。

女性の準備は長いらしいから…花でも見ていようかな?
ずっと見ていなかったから、懐かしい気がするし。

僕と海鈴を逢わせてくれた百合を見て、鈴蘭や薔薇、かすみ草にデージーと順番に見ていく。
二週間も見ていなかったのに全部の花が変わらず咲き誇っていた。

花なんて寿命が短いはずなのに…きっと海鈴が愛情を込めて育てているからだろうね。

じっと花達を見つめていると海鈴の気配が近くでして、振り向くと思わずハッと息を飲んでいた。
エプロン姿から大人っぽい黒と白のワンピースに、いつも一つにくくられている髪はおろされていた。

すごく、綺麗……

行こう、と微笑む海鈴にドキッと胸を高鳴らせつつも行こうか、と笑って返す。
手を繋ぎたかったけれど、それまでの勇気はなくて。
ただ、隣で歩いている海鈴にドキドキするのを抑えるくらいしかできなかった。

(僕らしくない…)

近くにあったイタリアンレストランに入って簡単な物を頼む。
海鈴は結構食べるらしくて『いっぱい食べていい?』なんて書いて聞いてきたからちょっとだけ笑った。
今まで仕事の付き合いで他の女と一緒に食事に行ったことがあるけど…どの女も小食で、たくさん食べる女なんていなかったから。

やっぱり海鈴は不思議な子。

トマトパスタや前菜が運ばれてきて、海鈴は筆談だったけどたくさん話した。
途中で沢田綱吉の名前が出たときは本当にびっくりしたけど。

綱吉…いつの間に海鈴に逢ったんだか。帰ったら問いつめなきゃね。

海鈴の良さを知っているのは僕だけでいいんだから。



「海鈴、どのケーキにする?」

『全部!』

「え」

『冗談です』

「…冗談に聞こえなかった」

『どういう意味ですか!?』



もうっと拗ねつつも笑ってくれる海鈴にクスリ、と微笑む。
海鈴はやっぱり甘党で、ケーキを二つも頼んでいた。
なんでもいつもは3つくらい頼むらしいけど…さすがに今日はお腹に入らないんだって。

まぁそうだよね。パスタに前菜にスープまで食べてるし。

でも別腹っていうものが存在しているらしい(海鈴曰わく)
コーヒーと紅茶と共に運ばれてきたガトーショコラと苺のムースに海鈴の目が輝いた。

そんなに嬉しそうにして…本当に可愛いんだから。

コーヒーに口をつけると同時に海鈴はガトーショコラにフォークを入れる。
そして本当に幸せそうに口の中に入れていった。
海鈴の食べる姿を見ているだけでも幸せな気分になるって…僕は、かなり末期なんじゃないかと思う。




「おいしい?」




満面の笑みを浮かべながら大きく頷く海鈴。
恭弥さんも食べたいですか?と聞かれて、僕はいい、と遠慮しておいた。
ガトーショコラは嫌いじゃないけれど……僕が食べるより、海鈴が食べた方が幸せな気がしたから。

おいしいのに、と表情だけで伝えてくる海鈴に微笑んでもう一口コーヒーを飲み込んだ。
海鈴の甘いものを食べるときのスピードは僕も目を見張るほどで、すごいスピードで平らげる海鈴にすごいね、と笑ってしまった。

海鈴は幸せそうな顔のまま“ごちそうさま”と無音で言って手を合わせる。
僕も残りのコーヒーを一気に飲み干して、帰ろっか、と立ち上がった。
海鈴も頷いて僕に倣って立ち上がる。




『お金、半分出します』

「無理。すでにもう払ってるから」




いつの間に!と驚いている海鈴に秘密、と笑って誤魔化す。
普通女性に払わせるわけないでしょ?ちょっと海鈴はその辺が抜けてる気がする。

…それって逆に男とデートとかしたことないってことなのかな?

聞きたいけど…後悔しそうだから聞かない。
夜道は危ないから送っていくために海鈴の歩幅に合わせてゆっくり歩いていく。
歩きながら筆談なんてできないから自然と無言が僕と海鈴の間に広がった。

でも全然嫌な空間じゃない。

むしろゆったりした、落ち着いた空間だった。
すると突然、海鈴に僕のシャツの袖をぐいっと引っ張られる。
どうしたの?と振り向きながら首を傾げると、海鈴はすごく楽しそうに笑いながら夜空を指さした。

その指の先を辿って夜空を見上げれば、目の前に広がるのは満点の星空。

キラキラとダイヤモンドのように光り輝く星々…
思わずワォ、と感嘆の声を漏らすと海鈴は空気だけで綺麗だね、と伝えてきた。



「本当に…綺麗」



手を伸ばしたら一つくらい届きそうと錯覚してしまう。

届くはず、ないのに。

海鈴も同じ事を考えているのか背一杯に手を伸ばしている。
今まで星空なんて一度もゆっくり見たことなかった。
でも海鈴が僕の知らない風景をたくさん教えてくれる。

海鈴に逢うまで、花があんなに綺麗だなんて知らなかった。
ケーキがあんなに美味しいなんて知らなかった。
星がこんなに綺麗だなんて知らなかった。
世界が…こんなに明るいなんて知らなかった。

目を細めて夜空を見上げれば、



一筋の流れ星
(君が隣で嬉しそうに笑った気がした)

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