熱帯夜の誘惑


 僕は最強だと称されるものの、人間であるが為に体力には限界がある。最近では立て続けに出張が重なり、あちこち飛び回ったせいで正直ヘトヘトだ。
 こんな時に脳裏に浮かび上がってくるのは、やっぱり大好きな彼女の柔らかく笑った顔で。それだけでスーっと疲れが取れ、癒されていく僕はかなりの重症だ。
 だけど、想像だけで満足する僕ではない。数週間も会えてない名前の顔が見たい。電話越しじゃなくて、生で声が聞きたい。愛しい身体に触れたい。充電したい。しばらく会えなかった反動で、想いが溢れていく。
 とは言え、今の時刻は深夜を回っている。もう眠っている頃だ。起こすのはさすがに悪いから、ベッドに忍び込んで起きるまで名前を抱き締めて僕も寝よう。ニマリと口元に妖しい笑みを浮かべながら、合鍵を手に取りガチャッと静かにドアを開けた。


「あっ…、悟ぅ、っ」
「!?」

 リビングから漏れた灯りと共に眠っている筈の名前の淫らな声が聞こえ、思わず立ち止まる。……これって、もしかしなくてもそういう事?ゆっくり靴を脱ぎ、忍び足でリビングに向かう。

「あぁっ、ぁん…っ、ん、ぁあっ」

 まるで僕に覗いて欲しいのかと思う程、絶妙に少しだけ開かれたドアの隙間からこっそり中を覗き込めば、ベッドに背を預けながら脚を大きく開いて行為に及ぶ名前の姿が。
 リビングのドアに背を向けているせいか、僕の存在には気付いていない名前。

「やぁ…っ、ああ、イッちゃぅ…っ、イッちゃう、ひゃぁっ!」
「…こんなところで大きく脚開いて厭らしいねぇ、名前ちゃんは」
「!っ、さとる、」
「いいよ、そのまま続けて」

 ピチャピチャと厭らしい水音を立てながら、気持ち良さそうに甲高い声を上げる名前の前に立てば、突然と現れた僕に驚いて手を止めた名前の潤んだ瞳が、僕を見上げた。
 その姿に酷く欲情するも、もう少し見ていたい僕は続けるよう促す。

「や、やだぁ、恥ずかしいよっ」
「もう見ちゃったから恥ずかしがる必要ないでしょ?僕を想いながら一人で慰めてる名前をもっと見たいから。ほら早く」
「や、やだよ」

 途端に羞恥の情に駆られたのか、脚を閉じて蹲りそっぽを向いてしまった名前。えー。もっと見たかったのに。仕方ない。サングラスを外してローテーブルの上に置いた。これでちゃんと、名前の乱れた姿が見れる。

「じゃあもういいよ。代わりに僕がしてあげる」
「やっ、ああっ、!」

 閉じてしまった脚を半ば強引に開き、トロトロになったそこを舐め上げた。するとまた蜜が溢れ出し、僕の口の中は名前の蜜でいっぱいになる。

「あぁっ、だめっ、あんっ、そこ…っ、んやぁっ!」
「名前のここ、凄い溢れ出してる。ほら見て、ソファーが名前の蜜で水溜りみたいになっちゃってるよ?」
「やぁ、言わないでっ」

 脚の間から顔を離して指を咥える名前にそう言えば、恥ずかしそうに脚を閉じようとするものだから阻止する。

「あんっ、やぁ、!はぁん、ああっ」

 再び脚の間に顔を埋め、陰核を集中的に舐めながらグチョグチョになった中に指を2本突っ込んで掻き混ぜれば、既にイキそうになっていた名前は僕の指を呑み込み、腰を浮かし始めた。

「ひゃぁっ、あ、んぁっ、やぁっ、だめ、だめ、あぁぁぁっ!」

 ついに限界を迎えたのか、名前は悲鳴にも似た声と共に僕の指を締め付け、内腿をびくびくと小刻みに痙攣させた。

「イッちゃったね」
「はぁ…っ、はぁ…っ、さとるっ」
「でも休む暇ないよ?今度は僕が気持ち良くなる番だからね」
「あああっ!」

 身に付けていた衣類は全て脱ぎ捨て、随分前から主張し始めていた陰茎をズズズっと名前の中へと押し込む。

「…ああ、気持ちいい……」
「ひゃぁっ、あ!さとるぅっ、だめ、気持ちよくて、あぁっ、おかしくなっちゃうよぉ…ッ」
「う、もっともっと、おかしくなれよ…っ」

 温かくてねっとりした蜜が僕の陰茎と絡み合い、激しい快楽が押し寄せてきて噛み締めるかのようにきゅっと目を閉じる。
 飢えた野獣のように初めから激しく打ち付けていた腰は、更に激しさを増していくばかり。
 もっともっと、名前を僕でいっぱいにしたい。

「ッ、名前、愛してる…っ」
「私もっ、んぁ、ひゃぁっ、愛してるっ、!」

 名前の脚を持ち上げながら、奥まで突き上げる。その度に厭らしい水音が部屋中に響き渡り、快楽に溺れていく。

「あぁっ、…んん、ひゃぁっ、気持ちぃぃ…よぉっ」
「僕も、気持ちいい…っ」

 下で乱れる名前の艶かしい表情に、堪らなく愛しさが込み上げてきて、求めるようにキスの雨を降らした。

「ぁあっ、さとるぅ…っ、また、イッちゃうっ」
「く、僕も、もう…ッ」
「ひゃぁっ!だめぇっ、やぁ、ぁぁあっ!」

 何度も最奥を突き上げれば、一段と高い声を上げた名前。再び内腿をびくびく痙攣させ、僕の陰茎を締め付けた。
 その締め付けでイッた僕は、ドロッと中に吐き出された白濁と共に陰茎を引っこ抜く。

「はぁ…っ、悟、会いたかった」
「僕も会いたかったよ」

 ぐったりする名前を抱きしめ、その可愛い唇にキスを落とす。
 疲れていた筈なのに、それすら感じさせない幸福感に包み込まれていた。

「ってことで、もう一回ね」

 この後、何度それを繰り返したのか分からない。僕らは会えなかった寂しさを埋めるかのように、何度も何度も愛し合った。



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