後悔
※主人公の術式オリジナル出てきます。
軽く書いてるだけなので後はご想像にお任せします。




 悟との出逢いは、私が高専を卒業してしばらく経ってからの事だった。

 "最強な呪術師が居る"とは何度も耳にしていたけれど、私は特に興味を持つこともなく、そんな凄い人が居るんだなーと、どこか皆より浮いていた私はその程度にしか思っていなかった。
 だけどあの日、私は初めて彼の容姿…特に空のように澄んだ綺麗な碧色の瞳を見た瞬間、雷に打たれたような大きな衝撃を受けた。
 ……そう、完全なる一目惚れだった。


 卒業してすぐ一級術師に昇格した私は、与えられた任務を次々と熟していった。
 時には苦戦することもあったが、大して怪我を負う程のこともなかった。だから私は過大評価をしていたんだ、自分は強いのだと。
 "最強"を目の当たりにするまでは。

 とある任務の日、同じく一級レベルの呪霊を目の前に、私は初めて絶望感を味わった。火龍操術を使う私にとって、水を使う呪霊は天敵だったからだ。
 苦戦する私はそれなりの傷を負わされ、半ば諦めモードだった時に現れたのだ、呪術界"最強"の呪術師が。

「虚式"茈"」
「!」

 そして彼のたった一度の攻撃で、目の前の呪霊は一瞬にして消し飛んだ。
 その圧倒的な力の差を目の当たりにし、私は二度目の絶望感を味わう。崩れるように地面に膝をつき、悔しさで目の前が涙で滲んでいく。

「時には絶望感を味わうことも大事だよ。それがより一層呪術師を強くする。ま、僕には必要ないけどね」

 段々と近づいてくるその人の慰めているのか貶しているのか分からない言葉に、我に返った私は慌てて涙を拭い、目の前まで来たその人を見上げた。
 すると綺麗な碧色の瞳が視界に映り、雷に打たれたような衝撃を受けて息を呑む。

「龍をかたちどった火の塊を操る……なかなか良い術式だよ。数を熟せば君はもっと強くなれる」
「……はい」

 だけど今度は、私を慰めてくれているのだとハッキリ分かって嬉しさが込み上げ、思わず笑みが零れた。

「立てる?」
「あ、はい。ありがとうございます」

 サラッと手を差し伸ばしてくれた彼の手を掴めば、グっと手を引いて立たせてくれた。
 初めて触れた手の温もりは、今でも忘れられない。
 そして最強だと聞いていたものだから、てっきり体躯が良くて威厳がある人なのかと思っていたけど、実際はその正反対で意外だった。

「そんな見つめられたら、さすがの僕も照れるんだけど。これだからモテる男は辛いなー」

 そんな風に考えていたら、いつの間にか彼に見惚れてしまっていたようだ。
 だけどそう言いながらも、全然辛そうじゃない目の前の人に対して、私はどう反応すればいいのか分からなかった。

「ってことで君、その傷治ったら僕と一緒に仙台ね」
「……は?」

 一体、どういうことなんだ。
 思いもよらない誘いに、開いた口が閉まらない。……仙台?何がどうなったらそうなるんだ。
 だけど彼は、混乱する私にお構いなく言葉を続けた。

「僕の任務について来てもらう」

 "理由はないよ。ただの興味"
 そう言って口角を上げた彼。それはまるで獲物を見つけた野獣のようなもので、ついに私は何も言えなくなってしまった。
 こうして偶然出会した悟が気まぐれで私を任務に同行させたことがきっかけとなり、私たちの仲はどんどん深まっていった。


**


 それから幾度となく任務を同行してきたけど、私たちの距離感は一定の距離から縮まることはなかった。
 悟より3つ年下の私も壁を感じるからと言われ敬語はなくし、お互いに下の名前で呼び合う程の仲にはなったものの、そこからの進歩は何もなかった。
 他の女性より優しく接してくれているような、いないような。そんなもどかしさもあったけど、どこか出張に行く度に私の好物を買ってきてくれる悟に、ほんの数ミリ程度の期待をしてしまう自分が居るのも事実だった。

 だけどそれでも、想いを告げて関係を壊そうとは思わなかった。
 傍に居られるのなら、それだけでいいと思っていた。だってあの五条悟だよ?それ以上、望んではならないと思ってたから。

 それなのに、それなのにーー。
 自らそれを壊してしまった私は、馬鹿以外の何者でもなかった。