STAGE.3
コポポポポポ
新しく淹れたお茶が湯気を立てながら湯呑みに注がれていく。
何気なしにその光景をボーッと眺めていると、入り口付近に人の気配がして名無しさんが振り返る。
『‥‥土方さん?』
名前を呼ばれてハッとなった土方が、台所に足を踏み入れた。
何の用だろうと首をかしげると、焦ったように用件を伝えて来た。
「いや、茶をもらいに来た」
『あ、そうですか。言ってくれれば部屋までお持ちしたのに』
「いや、頼む人間を探すより自分で取りに来た方が早い」
『あ、そうですね』
言って、名無しさんは新しい湯呑みを取り出して、お茶を注ぎ入れる。
『あの、部屋までお持ちしましょうか?』
一応、提案してみるが、
「いや、ここでいい」
と、やんわりと断られたため、湯呑みを乗せたおぼんを差し出す。
その湯呑みを手に取る土方。
「‥‥‥‥」
『‥‥‥‥』
「‥‥‥‥」
『‥‥‥‥』
いやいやいや、何この沈黙?!気まず!!
お茶受け取ったんだから、さっさと部屋に戻って下さいィィィ!!
てか、あまり二人きりで居たくないんですけど。
自分が土方さんにとって、そういう対象になる訳がないのは分かっているけど、総悟の忠告を無視するのも怖いし。
と、とりあえず脱出だ。
『あ、あの、それじゃ、私行きますね』
「あ、ああ」
パタパタと足早に台所を出て行く名無しさん。
何となしにその後ろ姿を見つめていた土方は、ガシガシと頭を掻いた。
居間に戻ったのはいいけれど、せっかく淹れたお茶を持って来ていないことに気付き、総悟にものっそい呆れた顔を向けられた私。
ドチクショー!!