STAGE.3
『真選組24時、ですか?』
早朝会議を終えた隊士たちが数名、一時の休憩と称して居間に集合していた。
朝食の片付け後、お茶汲みを依頼された名無しさんは、机の上に湯呑みを置いていく中、今日の会議の内容を聞かされた。
「何でもテレビ取材が24時間密着であるらしいよ」
渡された湯呑みを受け取った山崎が、その詳細を教えてくれる。
「屯所にも撮影来るらしいから、名無しさんちゃんも映るかもしれないね」
『えっ?私はそんな‥‥』
とんでもないですと、首を横に振る。
「いやいや、名無しさんちゃんはこの真選組の華だからね。カメラマンもほっとかないよ」
お前に何が分かるんだ、山崎。
得意気に話す山崎に対して、悪いなと思いつつも、名無しさんは渇いた笑いを返す。
そんな中、横で静かに煎餅を食べていた名無しくんが口を開いた。
「しつけーよ、山崎」
え、それ先輩に言う言葉じゃないよね?
相変わらず毒舌な弟に焦って注意しようとしたところ、
「あ、すみませんキャプテン」
ええええええ?!
キャプテンって何?!
何の部活?!
てか何で敬語?!
明らかに山崎さんの方が歳上に間違いないののに、立場が逆転しているこの状況は何ですか?
たった数日で作り上げられている関係に困惑していると、廊下を通り過ぎる隊士たちが次々と名無しくんに対して挨拶をしていく姿があった。
「あ、キャプテンお早うございます」
「キャプテン、昨日のDVDマジよかったっす」
「またお願いします、キャプテン」
だから、キャプテンって何?!
男の子ってよく分からない。
『ねェ、キャプテンって何?』
不審に思って尋ねてみるものの、
「え、キャプテンって言ったら、手塚でしょ?」
と、意味不明な答えが返って来る始末。
マジ意味分かんねーよ。
心の中で毒づいても、自分が望む回答を得られないと悟り、すぐさま考えることを諦めた。
ハァと小さく溜息を零して、女中の仕事に戻ろうとした時、座布団を枕にして寝ていた人物がムクリと起き上がった。
「名無しさん、俺にも茶ァ頼みまさァ」
ふざけたアイマスクを取りながら、沖田が自分の分のお茶を催促してくる。
淹れて来た急須の中には、もうお茶は残っておらず、台所に戻って淹れ直して来るしかないので、「ちょっと待っててね」と言って、居間を後にした。
名無しさんが部屋を去ったことを確認すると、山崎が名無しくんに詰め寄って質問する。
「ねェ、キャプテン。例の件だけど、いつになりそう?」
「まぁ、焦んなって。今週末にでも予定してやるから」
手に持つケータイをいじりながら、口端を吊り上げて名無しくんが話す。
「でもお前、姉上の前で言うんじゃないぞ。言ったら、マジ殺すかんな」
「‥‥はい」