STAGE.8
「姉上?何もお変わりはありませんか?」
《ははっ、皆が出発してからまだ数時間しか経ってないんだから何もないよ》
仕事の合間を見て屯所へ電話をかけると、優しい声で姉上が応えてくれる。
ケータイを通じて聞こえるその声はやはり心地よくて、姉上の元へ早く戻りたいと思ってしまう。
「本日は出掛けられるのですか?ええ、お気をつけて」
非番となる姉上は、少し外に出ると言う。もちろん、心配で仕方がないが、姉上が行うことを止めることは出来ない。
ケータイを忘れずに持って行くように言って、通話を終了した。
「山崎ィィィィ!!」
庭でミントンしていたはずの山崎が、土方さんにボコられている光景が目に入った。
可哀相に。
やる気がないのは皆同じなのにね。
空を見上げると、太陽がサンサンと輝いている。こんないい天気に暗殺を企てようなんて奴いるのかね。
「‥‥‥‥」
あ、いた。
キラリと何かが光るのが見えたと同時に凄まじい銃声が轟いた。
「「局長ォォォ!!」」
ガマを庇って左肩を撃たれた近藤さんが倒れる。
騒然となるその場。
「近藤さん、しっかり」
隊士たちが駆け寄り、倒れた局長を取り囲む。撃たれたショックで気を失っているようだけど、急所は外れているから命の危険は無さそうだ。
しかし、庇われた当の本人は何の恩義も感じていないらしく、
「ふん、猿でも盾代わりにはなったようだケロ」
と、何とも悪役じみたベタな台詞を吐いた。