STAGE.10
ひとしきりボケとツッコミも繰り広げたので、今回の本題である任務の内容を説明しよう。
えーご存知の方もいらっしゃると思いますがー、この国の将軍の妹君である、そよ姫様が家出したってんで真選組がその捜索を依頼された訳です。
と言っても今現在ではとくに有力な情報もなく、捜査自体は足踏み状態。
「お姫さんが何を思って家出なんざしたんだか‥‥人間、立場が変わりゃ悩みも変わるってもんだ。俺にゃ姫さんの悩みなんて想像もつかんよ」
「立場が変わったって年頃の娘に変わりはねェさ。最近お父さんの視線がいやらしいとか、お父さんが臭いとか色々あるのさ」
「お父さんばっかじゃねーか」
街を歩きながら姫が家出した理由を問答しているが、結局、2人とも分かってねェのかよ。
てか世の中のお父さんに恨みでもあるのか。お父さんは娘に好かれようと必死なんだよ!
「江戸の街すべてを正攻法で捜すなんざ無理があるぜ」
そう言った総悟は、パーティーでも開いて姫をおびきだす作戦を提案する。
「そんな日本昔話みてェな罠に引っ掛かんのはお前と名無しくんだけだ」
「失敬だなぁオレはそんなんじゃ動きませんよ。むしろ土方さんが開いてもらった方がいいんじゃないですか?モテないんだから」
「え、何?!そっち系のパーティー?!」
「オイ何喜んでんだ、近藤さん」
「局長ォォォ!!」
そっち系パーティーの開催に近藤さんが参加の意欲を示したところ、血相を変えて走ってくる山崎(ロッカー仕様)の叫び声が聞こえた。
「どーした山崎?!」
「目撃情報が!どうやら姫様はかぶき町に向かったようです」
「かぶき町?」
山崎がもたらした情報に、土方さんが眉間に皺を寄せた。繁華街となれば、それなりに危険な輩も多い。質が悪い場所だと、舌打ちしてみせた。
でもそーいえば、
「姉上も今日はかぶき町に買い出し行ってるはずですよ」
「名無しさんが?」
総悟の言葉にコクリと頷く。たしか何か買い物に行くと言っていたはずだ。まぁ案の定ケータイは忘れて行ってるから、連絡は取れないけど。
「もしかして、そよ様と会ってるかもしれないですね」
冗談混じりにオレが言うと、「まさかなァ」と皆が笑う。
「「「‥‥‥」」」
「と、とりあえず向かうぞ!」
一抹の不安を感じながら、土方さんの掛け声に合わせて全員その場を駆け出した。