STAGE.11
「有休取って何すんだよ?」
「何って、そんな野暮なこと聞かないでくださいよ」
土方の質問に対して、「これだからオジサンは」というような表情で答える名無しくんに、案の定キレた土方は、
「‥‥死ね」
と、物騒な言葉を吐いて、提出された申請書に目線を移した。
「コレ、近藤さんに見せる書類じゃねーのかよ?」
「本当はそうですけど、居ないんで」
「‥‥‥‥」
「もちろん、お妙さんの所ですよ?朝一から相変わらず余念がないですねェ」
「素晴らしいしつこさです」とニコリと微笑む名無しくん。
その憎たらしい笑顔を横目に、後処理に追われるであろう自分を悟った土方は、朝から憂鬱な気持ちに襲われた。
そして一息つくと、名無しくんに部屋を出て行くようにとひらひらと右手を振る。
「オラ、有休は許可するからもう出ていけ」
意外にもあっさり許可が下りたことに、驚きとつまらなさを感じつつも、名無しくんは言われたとおり副長の部屋を後にした。
「副長の寝顔って‥‥意外と可愛いんですね」
と、からかうことを忘れずに。
「なッ‥!」
「に、バカなことを」と、土方は枕を投げつけたが、素早く閉じられた襖によって、それは空しく畳の上に落ちた。
朝から、上司(ストーカー行為の後始末)と部下(寝起きのイタズラ)のダブルパンチ。
その迷惑行為に、一気に身体は重くなったが、とりあえず出掛けなければならない。ハァと大きな溜息をついて立ち上がると、着流しを脱ぎ捨て制服に袖を通した。