STAGE.11
「オイ、総悟」
「何ですかィ?土方さん」
夕食前、食堂へ向かう途中の沖田を土方が呼び止める。
「何ですか、じゃねェよ!女中にくだんねーこと吹き込みやがって!」
「くだんねーこと?」
土方が言う女中とは、おそらく名無しさんのことだろう。
首をかしげる沖田がしばらく考えたフリをすると、思い出したかのように手をポンと叩いた。
「あぁ、土方さんが本物の犬の餌マニアだってことですかィ」
「違ェよ!だいたいマヨネーズは森羅万象何にでも合うように作られてんだよ!」
「じゃあ、愛読書は“ToLOVEる”で理想のタイプはララ」
「違う!俺はマガジン派だ!」
「となると、小学3年生まで母ちゃんのおっぱい吸ってたこと」
「だから、どれも違っ‥‥!」
「土方さんがムッツリってことでしょ」
「!!!」
突然、会話に乱入した人物が土方の背後に立ち、フッと耳に息を吹き掛ける。
急な不意打ちに、悪寒が全身を駆け巡ってそのまま土方は固まってしまった。
しかし、そんな副長は放置して、その人物、名無しくんは食堂へと歩いていく。
連れ立って隣を歩く沖田は、名無しくんが両手に抱えている物に視線を移した。
「何でィ?その大きな荷物は」
「あ、コレ?コレは姉上へのプレゼント」
嬉しそうに話す名無しくんは、食堂に入ると早速、夕食の準備途中であった名無しさんに声を掛ける。
忙しそうにしながらも近づいてきた姉は安心したように微笑み、『おかえりなさい』と言って迎えてくれた。
『早かったね』
「えぇ、大した用事ではなかったので」
ニコリと笑って応える名無しくん。