STAGE.20
「乙女座のアナタ・・・今日死にまーす」
・・・
「姉上、お出掛けですか?」
『あ、うん。ちょっと万事屋に』
「・・・万事屋、ですか?」
朝方、屯所の玄関で下駄を履いていた所ひょっこりと顔を出した弟が尋ねてきたので、今日の目的地を簡潔に伝える。
先日の煉獄関での一件。
命に別状はないらしいけど、銀さんが大怪我をしたと聞いたので、手土産片手にお見舞いに行こうとしていた。
「そうですか。じゃあ、後から迎えに行きますね」
『え、いいよ。悪いし・・・』
私は非番だけど、名無しくんは仕事があるはず。
なので断ろうとしたけど、いつもの笑顔でかわされてしまい。
「大丈夫ですよ。それより、赤い組紐をお借りしてもいいですか?」
『組紐を?部屋にあるから持っていっていいけど、何に・・・』
使うのだろう。
髪を結うのに使っているものだから、男性である名無しくんがなぜ必要なのか、と私の疑問を聞く前に、弟は足早に去っていってしまった。
仕方がないので屯所を後にすると。
道すがら、遠くから何発もの銃声が聞こえてきたのは、きっと気のせいだと思うことにしよう。うん。
◇◆◇
『・・・お邪魔しまーす』
万事屋に到着。
さっそく呼び鈴を鳴らしたけれど、いつもは出迎えてくれる新八くんや神楽ちゃんが現れる気配はなく。
留守なのかと思いつつも、どうやら鍵は閉まっていないようなので、持ってきた見舞いのお菓子だけでも置いて帰ろうとソロリと扉を開いて中へと入る。
すると、玄関にはいつもの見慣れた黒いブーツがあった。