STAGE.21
「・・・僕のことはもういいって!もう、好きに生きて行こうって言ったじゃないか!」
―――ガンッ!
「ぶっ!」
彼らの片足は、銀時の頭を踏み付ける。
地面に突っ伏しながらも、その耳には新八と神楽の言葉が、しっかりと届いていた。
言われなくても、自分たちは好きに生きていると。
好きでここに来たのだと。
「「好きでアンタと一緒にいんだよ!」」
「!」
なんで―――・・・
今、銀時の前には信じがたい光景が広がっていた。
「・・・ッ!何で―――・・・」
万事屋の三人を中心にして、横に一列となるよう真選組の面々が立ち並んだ。
銀時を庇うように、撃つなら自分たちを撃てと。
それは、銀時の記憶を確実に揺り動かし、何かが咲き誇るような温かな風を吹かせた。
そして彼らは。
「私たち消す前に、お前消してやるネー!」
「行けェェ!」
神楽と土方の掛け声を機に、まるで一つの大きな波のように工場に向かって駆け出した。
その後方に取り残され、今だうつ伏せ状態の銀時のすぐ横に、また先ほどの彼らとは違う二つの影が近付く。
「まったく…熱くなりすぎちゃって、人質を解放するという肝心な事を忘れてる人たちですね」
呆れたような言葉を呟きながら、ザシュと、手にした刀で銀時を縛っていた縄を器用に斬り、左手をかざした名無しくんと。
『そこが皆のイイところだよ。…さぁ、行きましょう、銀さん』
いつものように、穏やかで優しい笑みを浮かべながら、右手をかざした名無しさん。
二つの手が銀時の前に差し出される。
「おめーら…」
驚きながらも、その両方の手を力強く掴み立ち上がった銀時は、口元に笑みを作ると。
「ありがとな」
そう一言だけ残し、ぐっと足に力を込め、跳ねるように走り出した。