STAGE.26
台所に立って、茹でた麺を水洗いしていると、ふと、誰かの気配に振り返る。
『銀さん?どうかしましたか?』
「あ、いや…」
いつの間にか入口付近の壁に寄り掛かっており、不思議に思って首を傾げるも、特に何と言うこともなく、中に入ってきて冷蔵庫を無造作に開けていた。
「何か、冷たいもんでも…」
『冷たいものですか?果物なら…』
デザートにと用意していた林檎や桃などがある。
銀さんはとくに不満も無いようだったので、ザルに入れた麺を冷やすために冷蔵庫に入れると、交替で中にあった林檎を取り出した。
『林檎、切って持って行きますね』
だから居間で待っていて欲しいと伝えたけれど、すぐに食べたいのか、銀さんは私の隣から動こうとはせず。
疑問に思いつつ顔を上げて見ると、何か言いたげに視線を彷徨わせていた。
『銀さん?何かありました?』
「あ、いや、そのー、何だ…」
『…何でしょう?』
歯切れが悪い感じにイラッとしつつも、林檎の皮を剥きながら銀さんの言葉を待つ。
けれど、一向に続く言葉はなく。
『もしかして、やっぱり迷惑でしたか?今日の食事会』
許してくれたと思っていたけど、今も我が物顔で台所を占領しているし、家主として私の行動が癪に障ったのかもしれない。
不安げに見つめると「違う、違う」と銀さんは首を横に振った。
では、何なのかと流石に私も訝しげな表情を向けてしまい。
「や、馴染んでるなーと思って…」
『?』
「…その、神楽や新八も喜んでるし、こういうのも悪くねーッつーか…」
『はぁ…』
回りくどい言い方に本心は分からないけれど、感謝されているのだろうか。
もしくは、また来ても良いと言いたげな。