STAGE.26
『喜んで貰えたなら良かったです。張り切った甲斐がありました』
銀さんが言いたいことは憶測でしかないけれど。
彼の言葉に応えるよう笑顔を見せて、『それに』と話を続ける。
『やっぱり万事屋は三人揃ってる方が嬉しいです』
今日も何だかんだ肉の争奪戦やいざこざはあったけど、いつものメンバーが笑い合ってる姿を見れて、本当に嬉しかった。
だから、皆も楽しんでいてくれたら、もっと嬉しい。
そう伝えると、銀さんは少し驚いた表情を見せながらも「そーか」と優しく微笑んでくれた。
『はい。…あ、銀さん食べますか?』
何だか雰囲気が和んだところ、ちょうど林檎の皮も剥き終わったので一切れ爪楊枝にさして銀さんに差し出す。
すると、爪楊枝を持つ私の手ごと掴んで口元に運び、パクリと一口で頬張ってしまった。
シャリシャリと果肉が噛み砕かれる音を聞きながら、さすが男の人だな、なんて感心していたけれど。
手が。
握られたままで。
『……』
何だか、人が食する姿を目の前で見るっていうのは。
『あ、あの…銀さ…』
気恥ずかしさに、距離を取ろうと一歩下がった、瞬間。
────ガンッ!
「銀さん、なに姉上に触ってんですか。気持ち悪い」
横から伸びた手が銀髪の頭を掴み、容赦なく壁に打ち付けていた。
留まることを知らない弟の暴挙に苦笑いを浮かべるしかなかったけど、気絶した銀さんは、そのまま首根っこを掴まれズルズルと強制連行されていた。
『えと…』
ひとり台所に残された私は、とりあえず準備の途中だった冷麺の用意をしだした。
時折、居間から聞こえる笑い声や叫び声。
それは、穏やかな日常を取り戻したように心地よくて。
彼らと更に仲良くなれた。
そう思える素敵な一日になりました。
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宝物のように大切な時間を君と。